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 第35回部落解放研究京都市集会

 

第5分科会  「これからの同和保育を考える」 

部落解放をめざす保育所・地域・家庭の役割、保育所と小学校との連携

パネルディスカッション:テーマ「保育所と小学校の連携のあり方」

講演・コーディネーター:梅田昌彦(大阪芸術大学)

                パネリスト:古野幸子(保育所)

                       三上裕子(保育所)

                       城野健司(小学校)

                                京都会館会議場 ☆ 参加者数=97人

                                              (保育所職員54、教職員7、運動団体・保護者7、行政その他29)1 講 演

 子どもの様子を小学校や地域に伝えたり小学生の様子を保育所に伝えたりということは長いこと行われてきた。これからは子ども観の共有からさらに一歩進め、保育と教育の中身の連携を強めるべき。スムースな就学に結びつけるためには連続性が保たれていなければならない。保育と教育の中身をともに創造するということがこれからの重要な課題である。

 主体性を育てる保育について、以前は小中学校の先生に理解がしてもらえなかった。子どもが集中できないことや我慢できない姿を保育所のせいにしていた。

 だが、今日では、小中学校の先生が自由保育を評価するようになってきている。

 保育所は遊びが中心、小学校は学習が中心だが、子どもの主体性を育てる点については学校も保育所も同じである。自由保育は保育所だけの課題ではなく、学校へも引き継がれていくべきもの。ただしウエイトは違う。その点の相互理解が必要である。小学校は保育所から、保育所は小学校から、それぞれ保育と教育の課題を学び取って欲しい。

 保護者会と保育所の話し合いが重要。職員間の連携は、保育の質の確保の基本。さらに、保護者同士の交流、連携も大切。保護者会が各保育所を回り、保育所の様子、保護者会と交流しているところや共同子育て学習会(保育所、学校、児童館、保護者会など)を継続しているところも。互いに学びあえる関係を築くことが大切であり、ひいてはこれが子どもに返っていく。

2 保育所からの報告

 保育所で大切にしてきたことが学校でどう生かされているのか、就学前教育を保育所ではどう取り組んでいるのか、保育所と学校双方の思いがかみ合わないことがある。保育所では、主体的に生きる力や人とかかわる力を大切にし、それが学校の学力につながるものと考えている。

 本保育所では、年長児が小学校にしなやかに就学していけるよう子ども相互の交流を大事にしている。小学校1年生からの呼びかけで公園や河川敷で一緒に遊んだり、子どもの不安や疑問をビデオレターに託し、1年生のお兄さんお姉さんが自ら学校で答えてくれるという取り組みを行ったりしてきた。職員の連携では、子どもの様子の伝え合いを何回も持ったり、小学校の授業参観を行ったりしている。そのなかで保育所において大切にしていることや保育の具体的な取り組みやそのねらいを伝えている。

 市営保育所は地域の親子や小中学生、ボランティアなどに広く開放し、地域におけるいのちと人権をはぐくむ拠点としての役割を担おうとしている。保育所の子どもたちはやさしく関わってもらったり、おもいきり活動的に遊んでもらったりするなかでたくさんの刺激を得ている。大人にも子どもにも大きな刺激になっている。

3 パネルディスカッション

[小学校」主体性を育てることは保小共通。子どもがおもしろいと感じたことは、目の輝き、飲み込みが違う。遊びきれない子どもは集中もしきれない。保育所で集中できる力をつけることが大切。

[会場質問]主体性を育てる保育の実際を聞かせて欲しい。

[保育士]先ず、遊びたいと思うおもちゃ、環境を整えることが大切。絵を描くことが好きで加わろうとしない子に声かけを繰り返して、自分から遊びを切り上げて参加するようになった。主体性を育てるとは、決して放任を意味するのではない。

[会場質問]小学校から見た保育所との交流の意義についてはどうか?

[会場参加者]子どもの自立を目指す目的で生活科において保育所と交流。人とかかわる力、聞く力を育てたいと思い、交流をしてきた。1年生の実態は、入学時は子どもたちがばらばらで、好きなときに抜けて遊んだり遊びの中に入らない子がいたりして自己中心的。子どもの主体的な取り組みが大切で単元も自分たちでやり切れることを目標にした。今ではビデオレターを見ながら自分たちなりに教えてあげたいという気持ちが出てきて保育所児童に交流呼びかけるまでになっている。保育所の子に説明するために、自分たちで考え、行動している。1年生自身の自信にもつながった。ともに学びあうことができた。徐々に互いにコミュニケーションがとれるようにもなってきた。

[会場質問]主体的な保育の実践例を聞きたい。自由保育をどうとらえたらいいのか。

[保育士]自由保育について主体性を育む保育という理解をしている。例えば3歳児のプール遊び。いやで休む子や小さなプールでなければだめとか水自体が怖く砂場で遊ぶ子も。そうした子どもには、まず理由を聞く。顔に水をかけないなど水を楽しめる配慮から入り込むうちに楽しそうな友達の様子を見て徐々に水やプールに親しめるように変わっていく。自由保育は、プールがいやならやらなくていいよ、ではなく、狙いを持って徐々に子どもの気持ちに沿いながら主体的に行動できるように援助していく保育である。

[コーディネーター]自由は人権でもあることから自由保育は人権保育とも言える。「自由」という言葉が、好き勝手というようなニュアンスにとらえられる可能性もあり、むしろ、主体性を育てる保育と呼ぶ方がよいだろう。

[会場質問]自由保育について、学校ではどのようにとらえているのか?

[小学校]子どもの主体性に重点を置いて、自ら遊んだりかかわったりすることを大切にしている保育であると理解している。保育所では砂遊びを徹底的にやらしきるということだが、学校では各教科があり、もっと体育がしたい場合でも終わらざるを得ない。体育をいつまでもしていて算数を削ることはできない。保育所と学校との違いにより子どもがとまどいをもったら可哀想である。それぞれの先生同士がどのように保育・教育内容をすりあわせるのかが課題である。

[会場質問]子ども主体の保育を打ち出した平成2年度の保育指針改訂が学級崩壊につながったと学校からいわれたことがあるが本当にそうなのか?

[小学校]子どもは遊びきるべきであり、遊びきれない子は勉強しきれないと考える。その意味では子ども主体の保育は大事である。ただし、例えば国語がいやという子どもにどのように好きにさせていくのか、家庭背景にまでかかわっていくことが大切ではないか。子どものわがままかどうかの見極めも大切であると思う。

[コーディネーター]1年を通して子どもの様子を観察して子どもごとにどうかかわっていくのかを把握することが大切。いろいろな体験を子どもたちにさせているか、保育士の意思統一がとれているか、が課題である。

[会場意見]保育と教育の内容の連携が大切。保育所と同じ内容を行えばよいのではなく保育所から学校への連続性の確保が大切。子どもの育ちのなかで社会性をいかに獲得させていくのか。言葉や相手・自分の人権を尊重することが大切である。

[コーディネーター]家庭で教育に力をつけていくためには、保護者同士をつなげていくことが必要。保育所や学校から言ってもなかなか変われない保護者が、他の保護者のがんばっている姿を見て励まされる。

[会場意見]連携が見えなかった時期もあったが今は着々と積み上げられていると実感する。

4 まとめ

 今回は保小連携を掘り下げる目的で開催し、その目的が達成されたと感じた。それぞれが地域に持ち帰り実践に生かしていただきたい。

 

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