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第36回部落解放研究京都市集会

  第4分科会

だれもが、安心して住み続けられる

福祉と人権のまちづくり

就労支援・地域福祉活動計画を活用して福祉で人権のまちづくりを進めよう!

                          みやこめっせ第1展示場B

 

 

  司  会       谷口 眞一 (部落解放同盟京都市協議会)

    コーディネーター   宮崎  茂 (京都市職員部落問題研究会)

  報告・パネリスト  冨田 一幸(部落解放同盟大阪府連合会西成支部支部長)

             松本 秀樹(社団法人 おおさか人材雇用開発人権センター)

             原田眞智子(NPO法人 善法雇用促進協議会理事長)

             辻本 成秀(京都市文化市民局市民生活部 人権文化推進課担当課長)

  記  録       山中 武志(部落解放同盟京都市協議会)

             木村 俊典(部落解放同盟京都市協議会)

 *参加者     84名 

 

■討議の柱                             宮崎 茂

 ここ数年の当分科会の議論で、まちづくりは単に箱物の整備だけでなく、従前居住者の教育・労働・文化・教養など多岐にわたる分野にも関わらないと本当の人権尊重の街が見えてこないことを発見しました。それで、今回は、地域就労支援事業を活用して日本初の障害者雇用のための事業協同組合=「大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(エル・チャレンジ)」を組織して活動しておられる大阪市西成地区からの報告をはじめ、2003年度(平成15年度)から大阪府及び大阪市が行政の福祉化推進プロジェクト報告書の提言を受けて創設された「総合評価入札制度」の全容、当制度と連動し障害者、母子家庭の母親や就職困難者などの窓口でもある「社団法人おおさか人材雇用開発人権センター(C−STEP:大阪府1/4、大阪市1/4、民間企業1/2出資の第3セクター)」からの報告、及び京都府宇治市善法地区からは「同和」地区内で立ち上げた「NPO法人善法雇用促進協議会」の発表をしていただきます。また、指定管理者制度の導入により「今後のコミセンのあり方について」の京都市の考え方などもお話しいただきます。

 本日の狙いは、先進的な事例を聞くだけにとどまらず、新たな視点で新たなものを見つけ出し、京都の活性化、新しい制度を作り出すきっかけにしたいと考えています。熱心な討議をお願いします。

 

 

■パネラーからの報告

 

1「入札制度に挑んだ障害者雇用」                  冨田一幸

 

 本日は、障害者雇用に焦点を絞ってお話しします。「人権」を考えるには、物の考え方を変える、やわらかくする必要があり、また、現在の新聞に出ているような事象と結びつけて考える必要があります。

 私は5年前に、大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(エル・チャレンジ)を作りました。

 「失業」の言葉は、「一度も働いていない人」は対象ではない。「失業者になれない人」がいることを考えてほしい。どこにでも、仕事はあるのではないかと思う。部落解放同盟の新聞2000部を郵送していたが、それを障害者に配ってもらうことをはじめました。

 役所の庁舎清掃業務、公園清掃を仕事の訓練に使えないかの取り組み。大阪市の庁舎清掃の例では9500万円の委託金額がダンピングで2500万円まで下がったが、これは、労働者に低賃金を課し、雇用保険もない、丸投げの横行によるものであった。これに対して、入札せずに標準価格(政策的随意契約)で受けて、テストを1年間してもらうような取り組みを行い、100人の知的障害者が3億円の事業を行うこととなりました。

 入札制度を改革する手法は「総合評価一般競争入札制度」、金額だけでなく、障害者の雇用や母子家庭の母親の雇用、ホームレスの雇用等を公共価値とし、それを点数化し、加点する。価格点が50点、公共価値点が50点とし、その合計点で争う。同点なら価格競争となるが、最低制限価格を下回ると調査対象となる。改革の結果、公共施設で知的障害者の雇用が増加し、法定雇用率の10倍の18%になりました。

 ビルメンテナンスは、これから伸びる仕事であり、そして、きわめて分けやすい仕事です。指定管理者制度の導入により、株式会社が市の仕事(行政)をする時代となってきます。まちづくりは「人と人との関係」です。行政改革は「行政と市民との関係」を変えること。「やってあげる、やってもらう」から「やっていこう」が改革です。

 知的障害者の問題、同和問題等々を考えるとき、社会が変わらないと身体障害者の問題は変わらない。その一例がハンセン病です。世の中の人の見方が変わることによって、急激に変わってきました。

 発想の転換が大切であり、チャンスはまちづくりにあります。行政制度の変わり目に着目して、何か自分ところの地域でやれることがないか考えることが非常に有意義です。

 

 

2「人材スキルアップコースの挑戦」                 松本秀樹

 

 1981年に「社団法人同和地区人材雇用開発センター」という名前でスタートしました。これは、1975年にいわゆる地名総監事件が起こって、民間企業がもっと積極的に同和地区住民を雇用していこうということで作られた組織です。

 第3セクター方式で、企業は、作られた当時は420社ほどですが、今現在は1014社で、行政は、大阪府、大阪市、あと44市町村すべて会員として入っています。

 同和地区住民の積極的な雇用ということで、1981年から2002年までに民間企業に同和地区の住民を売り込んで、700名強の方が我々の人材雇用開発センターを通して就職されました。

 2000年、同和地区の実態調査をやっていくと明らかに同和地区住民の失業率が普通の2倍以上に達し、雇用保険の受給率が半分以下と極めて低い状態が分かりました。積極的に、労働問題、就労問題、就労支援をやるために、新たに2002年から、地域就労支援センターを各市町村に一つ作っていこうとし、現在は、すべての市町村に設置されています。

 ハローワークで就労支援しているが、そこではなかなか仕事を見つけられない就職困難者、母子家庭のお母さん、障害をお持ちの方、それとニート、引きこもりとか不登校の方等がおられます。地域就労支援センターでは、コーディネーターの方が、積極的にその方を発見していくシステムを作って、就職できないその阻害要因がどこにあるのか、どのような形にしたらうまく、スムーズに就職できるのかを、相談業務を通じてマンツーマンでやっています。

 我々おおさか人材雇用開発人権センター(C−STEP)は2002年、名称変更とともに内容も変ってもう少し抜本的な就労支援をするために、積極的にそれらの方を雇用した企業を褒めていく顕彰制度を確立しました。

 きめ細かに評価するため、点数を決めました。例えば、同和地区の人の採用で何点、訓練で何点、企業の人が求職者を研修したら何点、高いものには大阪府知事が表彰し、人権を考える企業をもう少し積極的に褒めていこう。環境への貢献とか、人権という視点を持って、企業を評価していこうということです。

 各市町村の地域就労支援センターで支援し切れない人が、我々のところに登録に来ます。人材を育成すると言う発想に基づいて、1ヶ月間研修します。15名とか16名とか小さな組織で、2週間をビジネスマナー、パソコン研修、名刺の受渡し方とか、電話の取り方等を研修します。あと、残りの2週間は職場実習で民間企業に実際に入って、実習します。

 研修の最初は、何も分からない状態ですが、そのうちに仲間意識が生まれ、もう少し頑張っていこうということで就職の意欲が湧いてくる。2003年度、1期、2期で、24名受講され、そのうち、18名が現在働いている。就職率でいうと75%、修了生は割りと就職が決まる率が高いです。

 例えば、オムロンに事務職で、大倉建設の工事現場、病院での医療事務での実習と、1人1社ですから、様々な形で実習されます。

 これからの挑戦ですが、企業貢献度評価を質の高いものにする。箔を付けていく。あと、企業にもう少しこの貢献度評価を知ってもらい、もう少しこれをすればかなり人権にやさしい企業なのですよということを知ってもらい、この評価によって、人権問題を考えることができるのですということをもう少し企業さんのほうに広めていくことを進めたいと思っています。

 大阪だからC−STEPだからできた、という事業でも何でもないのです。どこででもできます。例えば、京都では商工会議所の連合会とか、伝統産業の組織とか、そういった企業組織の中で貢献度評価みたいな形で人権を評価する。人権をやったら京都府の知事の表彰で褒めてもらえる。そういった取り組みを進めて行けば、就労支援、労働問題に、焦点が当たる気がします。

 

 

3「地域福祉の向上と仕事保障を目指して」             原田眞智子

 

 私は、部落解放同盟善法支部の支部長を兼ねていまして、支部が中心となってNPO法人善法雇用促進協議会を設立し、そして、理事長という立場で今日も活動し、参加させていただいています。

 善法地域の概要ですが、宇治市の中心部の坂道の上に位置している地域、部落で、約270世帯720人、うち部落は150世帯430人の混住地域です。本当に、1993年から約10年間の間に、部落の実態が、より劣悪になっているような状況です。

 支部の概要ですが、私たちの支部の結成状況は、本当に少なく33世帯54人です。運動に対する基本的な事項は、自分たちで自覚を持って、自力自闘を基本において、協力して今、運動しています。

 地域の現状認識は、我々の支部は31年間運動してきたのですが、公共施設は特別措置法が切れた段階以降も、ほとんど特別施策がやられてきた予算で実施、運営されております。

 善法支部では住民の雇用を図るために、1999年10月に「善法雇用促進協議会」を設立しました。

 部落の失業者に仕事を提供することを目的として、さらに住民の福祉の増進、生活環境の向上、人権擁護の推進などの活動を通じて地域の雇用を図るということで、2001年3月に「特定非営利活動法人善法雇用促進協議会」を設立しました。

 仕事を求める人、正会員は、最初の150名が、今、ちょっと減っております。

 事業の内容は、7つの事業をこの4年間の中でやって来ております。ホームヘルパーの養成研修講座では、8名の人が資格を取り、給食サービス事業では、月2回約40食を作っております。まちづくりの活動では、懇談会と先進地の視察を実施し、まちづくりパトロールでは、火災予防、防犯、迷惑駐車の行為の防止などを訴えています。被災支援活動では、水道の断水に際して、丸3日間、昼夜、給水活動を行いました。啓発と広報活動も、イベント時に行っています。

 宇治市の地域福祉計画が、今年の3月末で策定され、私も市民公募に、NPOの理事長という形で計画策定委員に参画して、人権の視点に立った取り組みの必要性を述べ、部落問題の解決につながる計画となるにように訴えてきました。

 これからの地域福祉は、NPOの活動が中心となり、住民・運動体が果たす役割を一緒に考え、手を繋いで、地域を活性化し、人権問題、部落問題をなくして行く視点で、NPO活動を位置づけていかなくてはなりません。

 今後の活動展開は、NPO法人の活動を軸にし、指定管理者制度による公共施設の管理運営も視野に入れ、様々な分野で安定した雇用を発生させる取り組みを積極的に研究して、実践して行きたいです。

 

 

4「コミュニティセンター(隣保館)のあり方について」        辻本成秀

 

 コミュニティセンターは住民の皆様の生活の改善という観点で寄与してきたと考えます。しかし、高齢化、低所得化が進んでおり、母子家庭等が増加し、地域コミュニティが弱体化している。このような、新たな課題が生まれて来ている。その中で、新たな課題について、コミィニティセンター・隣保館が人権問題の解決を図るその視点の中からさらに取り組んで行く必要があります。

 施設の利用の観点ですが、広域利用について、動きが拡大しつつあるが、駐輪場、駐車場、そういう諸条件の整備ができていないので、本当の意味の広域利用には至っていません。

 新たなコミュニティセンターを目指しての取り組みですが、設置の目的として、人権文化が息づくまちづくりに資するため、社会福祉法に規定する隣保事業及び市民相互の交流を図るための事業を行うことにより、人権が尊重される豊かな地域社会の実現に寄与する市民の自主的な活動を振興するための施設とします。

 目的の実現のために、3つの視点の取り組み、市民の自主的な取り組みの支援、市民相互の交流と共生の視点、人権尊重のまちづくりで取り組みを進めているところです。

 今後のコミュニティセンターの果たすべき役割は、従前では同和地区における行政の総合窓口の役割、今後は、市民を主役とする中で、人権尊重のまちづくり、交流と共生の拠点としての在り方へ移行してまいります。

 自主的なコミュニティ活動、市民の自主的な活動に対する支援、人権啓発の取り組みなど、これらを行政の責任において、継続して行っていく必要があります。

 事業展開は、大きく3つで、市民の生活を支えるために行政として、行政情報の提供、窓口の紹介、保健や医療や福祉、これらのネットワークを構築し、これに参画して行く取り組み。また、就労支援の取り組みも、今後、重要かと考えています。学びとふれあいという観点は、京都市では、地元と受け皿づくり等につきまして、詰めたご議論をし、条件が整うならば、17年4月からでも、一部実施が可能であれば、委託をお願いしたいと思っています。また、施設の提供、貸館の関係、講座・教室の開催、情報提供、コミュニティづくりイベントの開催を、コミュニティセンターの大きな柱として、実施を進めてまいりたい。

 コミュニティセンターの運営の基本的な在り方、この観点の中で、一部委託によって、効果的・効率的な事業運営が可能になる。次に、住民に、受け手から担い手に変わっていただくことで、住民の自立意識が大きく向上するのではないか。さらに、住民自身が支え手となっていただくことで、コミュニティの希薄化の問題に対してのひとつの答えになり、コミュニティの再生、活性化が可能になるのではないか。さらに、地域福祉の推進の観点、地域交流、人権尊重の観点での大きなプラス効果が期待できます。

 国では隣保館運営要綱により、生活相談を行政の直営として行うこととしており、これを頭に置いた中で、要綱改正を致しております。その一方で、地域交流促進事業等は、社会福祉法人、NPO法人等への委託実施が可能となっており、各地域の運営組織の設立の状況等を踏まえ、平成17年4月以降に、事業の委託が可能なところから、順次進めてまいりたい。平成18年度以降、指定管理者制度による包括的な管理運営を検討しています。

 

 

■パネルディスカッション

宮崎  総合評価制度を作るのは、簡単ではなかったと思うのですが、その闘いの歩みを聞かせてほしい。また、全国で初めての事業協同組合の運営の内容、そして、5年前に作られたエル・チャレンジから何名ぐらい就労できたのか。スキルアップコース事業で、研修させて、就職させる。その後はどの程度で手を離すのですか。

 

冨田  知的障害者が作業所から、仕事に就こうとして一番難しいのは、親です。働きに行くと、いつ首になるか分からないし、家にストレスを持って帰ってくるし、心配だ。働かないで作業所にいたほうが親としては楽だ。この壁をどう越えていくかが、一番大きかったです。息子、娘が働いて変わっていく姿をご覧になっていないから、不安がるのは当たり前のことで、成長していく子供を見て、よかったと思えるように、実践で見せつけるしか答えはない。一番、難儀だったのはそこです。

 障害者は年金がありますから、障害基礎年金プラスで生活は成り立っていることも考える必要があります。

 僕も長年、同和対策事業をやって来て、一番腹が立った、一番悔しい事業は、奨学資金を欲しい額だけ貸してくれなかったことです。全部借りなければだめと言われた。親として6万円は出して上げられるなら、6万円は出してあげたかった。僕は、これが大事なことだったと、反省として思うのです。障害者問題もそういう視点をしっかりやって行かないと、福祉制度のままに任すとろくなことがない。

 収入が少し増えると生活保護が切られたりすることがある。福祉と雇用の間に橋が架かっていないというか、保護と自立の間に橋が架かっていない状態の中で、皆さん、なかなか働く機会にジャンプできない、もっと内的な苦しさがあると思います。

 知的障害、精神障害に対する社会の理解は、ほぼ皆無に近いくらい、理解をしてもらっていません。中小零細企業には、障害者雇用は、大きな会社にやってもらえばいいという方が多いです。私どもはそれに対して、「役所の仕事をするなら、障害者雇用もできないのに来るな」と、はっきり言い切らないと前に進まないと思います。

 人権は競争、人権で争うという立場を持たないと、やってもらうとか、やっていただくと思っているような人権では、こういう制度は創れません。

 その時の一番の本当の敵は、中小零細企業の結構、同じ仲間、同和地区の仲間であり、制度の壁になったと思います。その時は、容赦なくやることしか、解決策はないと思います。障害者雇用、環境問題、人権問題は、あれこれ言い訳の立つものじゃなくて、やらなければだめなのだという基準さえ作って、どうやるかはお互い力を合わせたらいいよというのが大事だと思います。

 協同組合を日本で初めて創ったのは、発注する時に、随意契約ができる共益的な団体は、いろいろな法律を調べたのですがこれしかなかったのです。

 全国どこへ行っても事業協同組合を作ろうと思ったら、大阪以外では作ることはできます。大阪はエル・チャレンジがある限り同一種を同一府県内に作ることは認められませんから、京都に作ることはできますし、今なら、NPOがその協同組合に加入することもできます。NPOに対する法整備を今後は求めていくことが、とっても大事で、私どもは、実はそのチャンスを指定管理者制度に勝ち抜くことを通じて最初の切り口ができないかと密かに狙っています。

 ホームレス問題、私のところは、西成地区で、隣り合せが釜ヶ崎という大きなホームレスの大集落地になります。ポイントは、公園に寝ている人たちを役所の人間が放り出そうとしたら、激しい抵抗にあって前に進みません。今寝ておられる方がこのままいたら餓死してしまう。何んとかして、すみやかに移さないとだめですけれど、できるのは、たった一人その人たちと同じ境遇にある同じ苦しみを持った人でしか、その人たちの立ち退きや、その人たちを、福祉、いや施策に誘導することはできません。

 これからの福祉政策は、住民自ら、ボランティア、当事者運動で、その人たちを育てていく、事業をさせていく、頼んでいく仕組みを作らないと福祉の施策が進んで行きません。役所の人が、「お前、部落民やから奨学金やるわ」と言ったら差別やと言われる。部落の人自らが受けに行こうとしない限り、絶対に、同和対策が進まなかったのと同じ現象です。

 

松本  スキルアップコースを修了した人を就労支援します。会員企業に、就職させて、その人の就労支援を終了する形になっています。昨年度、求人いただいた数が52件です。52件のうち30人の方が就職できました。

 例えば、オムロンさんで事務の職場実習し、それを見ていた麒麟麦酒さんで、オムロンさんで職場実習した人であるならばということで、採用していただいた例があります。わりと、職場実習と雇用は切り離して、我々は、やっております。

 

宮崎  NPOの善法雇用促進協議会は、今の小泉改革の緊急雇用対策を活用されて来ましたが、4月からその制度がなくなると、どういう今後の展開をされるのかをお聞かせ願いたい。

 

原田  一番、悩みなところなのですが、我々4年間やって来た実績がありますので、市民、市議会議員からの反響が結構あり、市単費でも続けていくべきとの意見も言われておりますので、市も若干残していく動きも聞いております。

 地域の公園の仕事は、NPOで一部受けているのと、NPOでない雇用促進で受けているものがあり、それを、NPOのほうに移行していく考えもあります。 また、新たな仕事を取るため、会社で、ごみの収集運搬の資格を持って、そういう仕事も取って行こうとしています。

 徐々に実績を重ね、大きな所にも進出し、安定した雇用に発展したいと思っております。一生懸命努力します。

 

宮崎  コミュニティセンターの業務で、市民の自主的な取り組みの支援と書いてあるのですが、自主的な取り組みを支援するのは隣保事業と違います。隣保事業は、自立できない人を生活相談で、自立をさせる。これが隣保事業であり、まだ国の運営要綱には、隣保館は相談業務をしなさいと書いてあるのですが、京都市のこの資料の今後の中に、相談が一切書かれてないのは、何か思いがあるのですか。

 

辻本  生活相談が、国で言う隣保館、私どものコミュニティセンターの根幹の事業と認識しています。

 

宮崎  認識しているのなら、書いてください。

 

尾崎  京都市立鳴滝総合養護学校の尾崎です。京都市の養護学校は今年度から総合制になったのですが、白川と鳴滝総合養護学校には、高等部に、卒業後企業就労を目指す子供たちを受け入れる生活産業学科、いわゆる職業学科を新設しました。

 今年が初年度で、毎年両校合わせて48名の卒業生を企業就労させていこうとしています。在学中に職場実習に行き、そこで得られたその子が就労に必要な力、それを企業から学校へ返してもらう。3年間でそういうことを育てながら、最終、就職に結び付けていこうと考えています。

 職場実習の受け入れ会社が、なかなか広がっていかないのが、当面の困っていることです。どういう方法を取ればいいのか、アドバイスしてください。

 

冨田  日本中、障害者雇用の法定雇用率を守っていない、違反企業だらけの社会が、この世の中です。医療・福祉は成長産業です。しかし、医療法人、社会福祉法人で法定雇用率を達成しているところは、まずないです。医療法人と社会福祉法人にしっかりと市、府から言ってもらって、職場実習先を開拓されることが、いま一番大事だと思います。

 もう一つは中小企業です。町、地域での訓練の受け入れ、私のところは、商店街での受け入れを実践したことがあります。一つでは仕事の量がなくて、うまく行かないので、商店会連合会で、仕事をうまく作り出して、受け入れ先を共同でやってもらいました。

 受け入れれば、障害者雇用は面白いということが必ず分かってもらえます。

 一番のヒントは、医療法人と社会福祉法人に早速当たれば、道は開けると思います。

 

宮崎  障害者の子供たちの実習で、職場に順応できるように訓練をこれから学校でもするというシステム作りが必要なことは、良く分かりました。これを京都市の社会福祉審議会の障害者部会で一回、ボールを投げなければと思います。社会福祉審議委員が「無理やでそれは」と言っているレベルでは、一生そこに、石を投げられないと思います。行政を通じて委員さんに訴えてもらうのは大事だと思いますので、教育委員会からも、声かけしてもらったらと思います。

 

冨田  際限のない実習は、法律違反になりますので、それだけは申しておきます。

 ある制度で表彰された小さな会社は、商取引がうまく行って、「案外利くものです」とおっしゃっていました。C−STEPの会員というだけで、商売がうまく行ったり、C−STEPで表彰されているだけで、営業がうまく行き、必ず、波及効果が出てきます。

 京都府連、うちの解放同盟とか人権の運動団体が、京都の町は人権の町とか、大阪は人権擁護の町とかいうような、大きな世論を作っておいてくれなかったら、そこでの商取引に人権が生きるかどうかは、申し訳ないけれども分かりません。市政、府政が、人権をどれだけ口をすっぱくして言ってくれているかというものがなかったら、うまくいきません。役所のモデルが民間の企業にも参考にされていく時代に、近いうちに必ずなって行くと思います。

 障害者雇用のため、同和地区出身者や苦労して働いているおばちゃんとかをクビにして、そこに障害者が入ることにならないかとの疑問には、ビルメン産業は、高齢労働者が大変多い職場ですから、年間、10%から15%の人が異動する産業なのです。新規雇用時に、障害者等の雇用をお願いしているだけです。

 中小企業が障害者雇用の法定雇用率等を達成するのは、人数が少ないから楽なのです。社会的な課題というのは、中小企業にとって不利だというのは、逆で、むしろ大きい企業に不利になるという現象を起こすということを付け加えておきます。

 

宮崎  入札制度から考えると、公正な取引でないと。これ、公正取引委員会から何か勧告なりが出ないかと思ったりするのですが、その辺は大丈夫なのですか。

 

冨田  地方自治法の違反になる可能性があります。地方自治法は、根本的に随意契約を認めず、例外措置ですから、本来は競争入札です。競争入札の基本は価格ですから、私らのやり方は、出るとこに出たら負けます。負けるか、いや、最高裁が3つあったら、2対1で負けるのかなというくらい、厳しいやつです。僕らと大阪府との腹の決め方は、裁判覚悟で頑張ろうと。悪いのは法律や。我々が悪いのと違う。必ずいつか、法律のほうが我々のほうに付いてくるという考えです。

 

宮崎  採用する時には、これだけ給料渡すと言って、後から、最賃適用除外にするという法律の網の目があるのですが、この入札制度の中で、チェック機能みたいなものが、行政の中で働くのですか。

 

冨田  除外申請する企業があっても、除外申請を受け付けない役所があれば、何のことはないのです。

 知的障害者の息子と同居のお母さんが、例えば、この子が理由で生活保護を受けておられる。この子の収入が上がると、生活保護が切られるかも知れないので、額を下げてくれないかとお母さんが申請する時がある。ここは頑張って、養護学校の先生とか地域の人が、お母さんを応援して、役所と相談して、なぜそんなに簡単に、少し給料が高くなっただけで生活保護を切るのかを、しっかり議論したら、必ず勝つはずなのです。

 今一番多いのは、最低賃金以下でもかまわないと、お母さんが養護学校の高等部の先生に申し出られて、先生が、そういうことですのでと言って、労働基準監督署に申し出られて、何か、そういうことでまとまっていくというケースがある。これは要注意事項だと思います。

 

辻本  協同組合や入札制度について、よそからのいろいろな問い合わせ、反響、参考にして実施したい。そのような動きはあるでしょうか。

 

冨田  制度を全部解説したエル・チャレンジという本を作りました。作る原因は、北九州市、札幌等から、多くの問い合わせがあったこと、私たちだけでなくて、自治体の側も入札制度の改革を、色々議論されていたことからです。

 障害者雇用、雇用問題でやったのは、私のところ大阪だけのケースだと思います。

 国指定事業者の特別のランクの人たちだけで、入札が行われて河川の管理・清掃等が行われている。僕らは、一生懸命、ホームレス雇用等で、是非、河川等での仕事をさせてほしいという提案を、今もやっているのですが。国は、制度で、法律でうるさいのではなくて、国に非常に大量の事業があり、それを、開放しなければならないので、多分、ずいぶん慎重になっておられるようです。

 障害者雇用は、国家の仕事、国の基準というやり方じゃなくて、私はどちらかというと、人権も、もちろん国の事業でなければだめですけれど、地方自治体、地域から、しっかり積み上げていく民主主義の方法のほうが、障害者雇用とは馴染むのではないかなと思います。障害者雇用に非常に厳密な法律を作らすのが、あまり、ピンと来ないのです。

 

宮崎  私自身も、解放運動と労働運動をずうっとやって来て、日雇いにしか行けなかったことが、差別だったということを運動で言っておきながら、現実の制度や法律をそのまま、「すうっ」とこう、僕らも飲み込んでいた。冨田さんから言われた、失業者といったら職を無くした者や、離職者というのは職を離れた者だと、けれど、日雇い、土方は、職はしていたけれど、証明書が出ない。これを、僕は、今まで、この差別を引きずってきた足跡として、きちっと理屈的に返せなかったということを、今日のこの分科会で、今もって、私自身が初めて感じました。

 障害のある方というのは、授産施設から仮に就職されても、授産施設は就労の場ではないので、前歴加算されなくてもしかたがないねと。こうなってしまったら、障害者は、それが当たり前になってしまいますので、私は、それを変えていく運動を据えなければと思います。

 是非、皆さんも、「どんなことでも疑問を持って、福祉は御上から降りてくるものと違って、皆からその疑問を上に上げていくものだ」ということを、最後のまとめにして行きたいと思います。

 本当に、現場から作り上げてきた制度が、国の制度になっているのが、日本の福祉制度でありますので、是非、様々な疑問を、やっぱり疑問だけに終わらさないで、自分たちの身近な運動団体や労働組合や、そういったところに波及をして、問題提起をしていただくことをお願いしまして、まとめに代えていきたいと思います。

 

 

*分科会を終えて(後日談)

 ・雇用、就労支援のテーマは参加者には、目新しく興味を持って、聞いていただけたと感  じた。

 ・しかしながら、先駆的過ぎて参加者が質疑を行うには、すこし難しい面があった。

 ・「福祉で人権のまちづくり」は、実践のテーマとして、非常に優れたものである。

 ・まちづくりの考え方も「バリアーフリー」から「ユニバーサルデザイン」に変わりつつ  ある。

 ・第4分科会ではここ数年、まちづくりのソフト部分に焦点を当てて論議してきたが、実  際に、まちづくりを推進するためには、ハードとソフトが一緒になるべきであり、次回  は、そのような観点で議論を深める必要があるのではないか。

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