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第49回人権交流京都市研究集会

  分科会

部落と人権

「被差別部落のまちづくり」

                  会場 大谷大学2号館2301教室  

 

 

パネラー 井ノ口 勝彦(千本ふるさと共生自治運営委員会

           ◎千本地域の建て替え状況とまちづくりについて

       樹下 康治(京都市都市計画局住宅室すまいまちづくり課長)

           住宅地区改良事業と崇仁地域のまちづくり)

       谷口 眞一(部落解放同盟京都市協議会)

                      ◎住宅管理からまちづくり〜先進地区視察報告

コーディネーター

      宮崎  茂  部落解放同盟京都市協議会議長

       

担当団体      部落解放同盟京都市協議会

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■井ノ口勝彦

◎千本地域の建て替え状況とまちづくりについて

 楽只地区では、1950年から1980年まで住環境整備が行われてきました。しかし、改良住宅の狭小や老朽化などの問題から市営住宅に満足しない青年層を中心とした流出が続き、それに伴う子供の減少や高齢者の上昇が目立つようになり地域内(町内)のコミュニティも弱体化してきました。

 そこで、行政と地域の代表だけによるまちづくりでは駄目だと言うことで、1993年に地元まちづくり組織である千本ふるさと共生自治運営委員会(略称じうん)が設立されました。

じうんでは、住み続けられる町をつくろうとしたきっかけの一つが、改良住宅の建て替えであり、今までは、京都市が計画を立てていたのですが、それではいけない、自分たちのまちは自分たちでつくっていこうと言うことで住民の意見を反映させたワークショップ等による市営住宅の建て替えがじうん主催で行われ、その結果、市営住宅と言う制限はあるもののそれぞれの生活スタイルにあった間取りや部屋の大きさなどが選択出来るようになり、そして完成したのが楽只21棟であり来年完成予定である楽只22棟です。

 また、じうんでは市営住宅の建て替え以外に多様な住宅供給が出来ないかと言うことで検討を行い、その結果、地区の住民にとって持ち家に住んでみたいと言う要望がありました。そして、1996年じうんから京都市へ「じうん持ち家プロジェクト」として要望しました。ただし、千本はあまり敷地が広くないなど持ち家を持つには地区外へ出て行かないといけないと言う状況があります。そこで、それを叶えるものとして、集合住宅としてのコーポラティブ住宅を考えました。また、千本の99%の敷地が市の所有地であり、元々京都市が国の補助金を入れて用地を取得した経過もあるので、分譲する場合には補助金関係などの手続きが複雑と言うこともあり、京都市が土地を50年以上の期間を定めて貸し出す定期借地権を用いたと言うのがこの取り組みの経過です。

定期借地権とは土地を一定期間借地(50年程度)し、建物だけを所有することで保証金、地代だけで持ち家を獲得することができ住宅の費用を低くおさえることができます。具体的に土地分譲住宅の6〜7割ぐらいだと言われています。

しかし、土地の借地期間終了時に更地にして京都市に返還しなければなりません。

また、コーポラティブ方式を採用したのは、家を建てたい人が集まって協同してつくることにより自分達の好みにあった質の高い住宅ができ、その過程で良好なコミニィティが形成することかできる。また、計画によっては一人では出来ない豊かな共有スペースを生み出すことができる、まちづくり発信型の多様な住宅供給だったからです。また、コーポの場合情報を開示しながら取り組みを進めるので知らない間に広告費やモデルルーム建設などの高い費用を払うこともなく、自分たちで出資金をつのり口コミや学習会を開いて入居者の募集を行うなどし、少ないコストでこのプロジェクトを進めていくことができます。                     場所は千本北大路から少し上がったところであり、主要のバスターミナルも通っていて周りが公園になっていることもあり左大文字が見えたり金閣寺などの名所も近くにあり大変環境の良い場所だと思います。

 これまでの取り組みとして、04年6月に第一回準備会を行い7回準備会や学習会をかさねメンバーの入れ替わりもありましたが、新大阪の現代長屋TENの見学を行いTENでは、組合結成するまでに約15名程度のメンバーの入れ替わりがあったなど苦労話を聞くなどして05年9月にようやく建設組合を結成しました。現在6軒で自分たちの選んだ設計士さんと各自のライフスタイルにあわせて設計を進めています。建設組合になってからも奈良の青山コーポに見学に行くなどして共用部分の使い方や間取りなどコーポならでわの醍醐味を体験しながら、組合員のみなさんで共用部分や全体設計についての検討など、だいたい月に一度のペースでWSを行い、WSで決定したことや各家の設計状況や自分の家のうりなどを建設組合ニュースとして発行しコミュニティを深めて行っています。

 今後の予定では、4月には建設に向けて京都市と土地の契約をして今年の末か来年のはじめには、自分たちのライフスタイルにあった個性的な家が完成する予定です。

  

■樹下康治

◎住宅地区改良事業と崇仁地域のまちづくり

 崇仁地域の住宅地区改良事業の区域と実績

北部は4つの区域にわかれ第1と第21986年に事業が終了しているものの、第3、第4については1980年代から現在も改良事業が継続中である。事業の進ちょくについて、市営住宅の建設は、北3地区住民は33棟、41棟への引っ越し。北4地区住民は、市営住宅51棟、52棟、53棟への引っ越しをしている。

また、道路整備は20路線中3路線が完了。

地区施設・下排水設備については、下京地域体育館、市民交流施設及び老人デイサービス、高瀬川流路変更が行われている。

改良住宅によって建設された市営住宅は一通り終わっていて、これから買収に応じた住民の引っ越し。一方老朽化した住宅エレベーター浴室の設置がない。

下之町西部団地 21棟から27棟、7棟たっているが、これらの建て替えとして、塩高ブロック、下中北ブロック、下中南ブロックの3地域へ建設する。すでに25日に着工し、20199月に完成予定。移転建て替えにより空いた土地は、京都市立芸術大学の建設用地の一部となる。

崇仁北部第3、第4地区住宅地区改良事業が長期にわたり継続しているところ、2008年度に同和行政終結後の行政の在り方について第三者委員会により議論が進められた。総点検委員会で議論がなされ、自立促進援助金制度、コミュニティセンターの在り方、改良住宅の管理運営、建て替えの議論、崇仁地区の環境改善という論点も提出された。20093月に提出された委員会の最終報告で、崇仁地区に関しては、「北部第3、北部第4地区だけでなく、北部第1、北部第2地区を含む北部地域全体を視野に入れた連続性のあるまちづくりの視点も必要」「環境や景観に配慮した、地域住民に希望をもっていただける崇仁地区の将来ビジョンを示す必要があり、早急に幅広い視点から議論していくべき」という方向性が示された。

 この報告を受け、地域の人口減少、少子高齢化、地域コミュニティの崩壊危機等、事業が長期化したことによる課題を早期に解決するため、第三者委員会を立ち上げた。「京都市崇仁地区将来ビジョン検討委員会」を2009年に設置した。委員会は、地域住民代表、大学教員、民間研究者等学識経験者から構成される。20107月に報告書が提出された。

将来ビジョンとして「創造・交流・賑わいのまち〜人と地域をつなぐまちづくり〜」を掲げ、これにそったエリアマネジメントの構築と事業の早期完了が不可欠であることから、土地区画整理事業を導入することを提言された。 

土地整理事業の目的

「住宅地区改良事業で買収した用地や未買収用地を換地手法を用いて集約し、安全で住みやすい新住居環境に配慮した区画整理を行い、長期化している住宅地区改良事業の早期完了を目指す」

 合併施行により、土地所有者(未買収)の選択肢が、

・土地家屋を京都市に売却し、市営住宅へ入居

・地区外へ移転              この2つであったのが

 ・換地手法により、地区内での土地所有(再築)が可能(売却不要)

                     これを選ぶことが可能となった。

 これにより、事業用地を集約することが可能となり、公共施設の整備、土地利用が進む。

 〇芸大の移転を契機としたエリアマネジメントの構築

・従来の行政主導への住民参加といった次元を超えて、新たな運営手法が必要。市民や地域住民、事業者、地権者、NPO等による主体的なまちづくりネットワークの構築が提言された。

〇エリアマネジメントの目的

 ・京都市立芸術大学を「創造・交流・賑わい」の核として、地域コミュニティの再生、〇地域ブランドの創生に取り組む。

 ・移転までの10年間のプロセスを大切にしたまちづくりを進める。

「歴史文化景観部会」「医療福祉部会」「にぎわい創出部会(崇仁新町の企画・運営)」

3つの部会を設置。

 

〇にぎわい創出部会「崇仁新町」

・塩小路高倉南東角(約1,000平米)

201821日〜2020年度上半期(2年半予定)

・運営主体 一般社団法人 渉成楽市洛座

・常設15店舗の屋台村

・午前11時〜午後11時まで営業

 

〇京都市立芸術大学の移転整備

 2015年度          移転整備基本構想の策定

2016年度         移転整備基本計画の策定

2017年度         基本設計

2018〜2019年度      実施設計

2020〜2022年度      建設工事

2023年度         大学の全面移転  

 

 

■谷口真一

◎住宅管理で自分たちのまちづくりを

1月31日、部落解放同盟京都市協議会まちづくり部会の先進地視察として、部会員8名と業者2名の10名が東大阪市蛇草地区及び荒本地区を訪ねました。改良住宅の指定管理を自分たちで積極的に受けていくことで、まちづくりや地域の活性化を実現している現状と実践について、市協では、昨年12月に大北規久雄大阪府連副委員長の講演会で学びましたが、今回は実際に現地を訪問し、自分たちの活動につなげていく目的をもって取り組みました。

現地では、蛇草支部野尻書記長、荒本支部長澤書記長はじめ支部役員、大北府連副委員長、他8名が私たちを受け入れてくれました。

はじめに長瀬人権文化センターに集合し、各々自己紹介の後、蛇草地区の概要や地域活動について話を聞きました。長瀬町の人口は2,422人、世帯数は1,479世帯で、うち3割が高齢者世帯です。まちの雰囲気も京都市内の各支部と比較して、規模は長瀬の方が大きいものの、高層住宅が立ち並び、住宅についた店舗はシャッターが閉じているのが多く、京都にある支部の雰囲気とよく似ていました。蛇草支部の取り組みのきっかけは、地区の実態把握のためフィールドワークやアンケート調査を行ったところ、地区の老人センターを利用しているお年寄りは2割ほどで、後はみんな、一般地区から来る老人たちであったこと。地区の高齢者は毎日一人で部屋にこもっていることが明らかになったことです。また、アンケートでは認知症への不安を抱えている人が多く、「オレンジカフェわかば」をオープンさせました。

次に荒本地区に移動し、こちらも人口は1,159人、705世帯で高齢化、孤立、貧困化(生保率)、貧困の連鎖が課題であるところ、NPO法人生きがい事業団かどやを設立し、コミュニティカフェかどや食堂の運営をおこなっているとのことでした。

両地区の住宅管理センターやカフェに案内された後、まちづくりのプロセスを鰍gRCコンサルティングの業務統括部長、飯島照喜さんから説明を受けました。きっかけは、昨年4月から市営荒本・北蛇草住宅の住宅管理が公募による指定管理者制度を導入したことです。行政主導で民間管理となることに危機感を覚え、地区や地区住民を最もよく知っている運動体が、これまでの経験やネットワークを活かすことで業務参入を決断しました。支部、府連、HRCが協力して「東大阪まちづくり機構合同会社」を設立したのです。この合同会社と、近鉄住宅管理鰍ニのパートナーシップにより、東大阪住宅改良室は近鉄住宅管理を指定管理者として選定しました。現地事務所の管理運営、保守・点検・清掃・消防・巡回・小規模修繕などは合同会社が近鉄から委託され、管理事務所の社員については地元の若手を採用しています。さらにサービス向上業務として福祉的対応事業が展開され、孤立死をふせぎ、住民からの相談、生活支援につなげることも役割としています。48時間玄関ドアの開閉がない場合に警報音が鳴り響く、「あんしんドアセンター設置事業」もこの取り組みの一環です。

有機的でダイナミックなネットワークにより1支部1起業をめざす運動展開は、自分たちのまちを、自分たちで「運営」していくという新しい発想です。「それができるのは自分たちしかない」というプライドがさらなる深化を促し、住民の輪を広げていることを肌で感じることができました。

 

【質疑応答】

 会場:西三条支部です。私たちの地域でも、住宅局のストック活用計画等が進まず、エレベーターや浴室設置などまだまだ進んでいません。今回民間を活用したまちづくりの提案ということで話がありましたが、どうしたら住民を巻き込んだまちづくりができるのか、何か示唆がありましたらお願いします。

 井ノ口:まずは「じうん」での話し合いで了解してもらいました。端っこがいい。住民の方々の個別の要望を聞き取り、現状を保証することで話をまとめました。住民自治でなければ、役所の判断ではなかなか進まないところがあります。

 宮崎:かつては、各地区に総合計画がつくられて、体育館、保健センター、学習センター等々、各地区同じ規格で進められたが、今、住宅室が中心に、住宅だけを立て替えていくというスタンスです。例えば、市協で、今使われていない学習センターはどうする?診療所はどうする?となったとき、それは住宅室ではない、別の局、部であると答えられる。保育所の移転などについても、千本地区では、はぐくみ局などが入って一緒に協議しているんですか?

 樹下:それは一緒に入って協議している。基本的に住宅で調整している。

 会場:千本支部書記長の小林です。建て替えで引っ越して、戻ってきた住民の方々は、基本的にはできるだけ、もとに住んでいた条件で戻ってもらう。2階の端のひとは、2階の端へというように。また、引っ越しを2回するのは嫌だ、という方は、そのまま建て替えのために引っ越した先に住むことも可能とした。住民のああしたい、こうしたいという要求を調整して、吸い上げて、それを調整して京都市に伝えながら、最終的には納得してもらっている。

 会場:辰巳支部の村上です。部落のまちづくり。かつては地域の中に様々な施設をつくっていって、浴場も含めて、皆が集える場所があった。親は今も改良住宅に住んでいて、浴場はないんですが、風呂にいくのがコミュニケーションになっている。まちづくりも、人と人との関係性が大事だと思います。

 樹下:地域の住民の方々のコミュニケーションはとても大事だと思います。ただ、地域によってそれぞれ背景は、成り立ちなどが違っていて、そういったことにも配慮しなければと思っています。建て替えや集約は、住民の声をよく聴いてやっていきたい。

 宮崎:千本の資料を見ていると1970年代、80年代に2000人ほどの住人がいたのが、40年ほどたって300人弱になってきたという、これは恐ろしい現状なんですが、これでコミュニティの維持というのは。若い世帯もひとり親世帯が多い。あとは圧倒的に高齢者であると。新しい器の住宅ができたとしても、今後の維持をどうするのかというのが関心事となる。自分たちの個々の住処の要望もあるだろうが、地区全体としての千本をどうしていくのか。事務局長としての井ノ口さんとしてはどのように考えていますか。

 井ノ口:もう一度コミュニティの在り方を考えていこうということで、新棟に関しては住民参加、住民主体のワークショップをおこなった。しかし、行政と住民が話し合いをしても、必ずしも住民の意見が図面に反映しない。そこで、地域のにぎわいを大事にしているのか、他からのにぎわいを大事にしているのか、という意見も出た。先ほどの意見にもあったように、浴場のようにみんなが集まれる場所は大切なので、これからも試行錯誤して考えていかなければならない。 

宮崎:市営住宅を借りる人というのは、生活に困っている人です。そういう人たちがこれから入ってくるということを前提として、にぎわいというのを考えていく。そこにはひとり親家庭の人もいて、お年寄りもいて、こういう人たちとのコミュニティづくりが必要かと思う。市協議長となって7年が経つが、福祉で人権のまちづくりというのは、そこがポイントだ。例えば保育所の入所基準に関しても、生活保護受給をしている、障害がある、ひとり親である等々、困難性が高いほどポイントが高く入所しやすい条件となる。だから、今、にぎわいということで、崇仁新町の報告がありましたが、今後住宅ができたあと、どうなっていくのかという不安もあります。

 樹下:大学が来ることによって、それまでの地域住民との関係性がどうなっていくか。大事な課題だと思っている。当初から検討している。崇仁新町は地元の皆様がどうやったら地域の中に大学を受け入れていくかということを考えた中での取り組みです。崇仁新町では飲食店等でのにぎわいですが、それ以外にも例えば、渉生学区のみなさんで、崇仁の写真展を開催して、古い写真を地域の人たちから集めて、昔と今を見比べながら自分たちのまちというものを、周りの学区の皆さんと共に考えていくというきっかけになりました。また、3月には5学区でウォーキングをして300名が参加して、東本願寺から魅力のある地点を回るという取り組みをしました。そうした取り組みを通じて、周辺学区の人たちとの交流をしています。それから大学を受け入れるということで言うと、若者が地域に入ってくる、芸術活動ができないかということも考えています。そういう取り組みを継続することで、大学と地域が分離しないような工夫をしています。

 宮崎:崇仁保育所が廃止になって、地域の外に新しく建つことになりました。崇仁のまちづくりは、様々な部局とのかかわりがありつつ、まちづくりが進んでいるが、楽只は誰も窓口にならない。これは何故なのかと思っている。その点はどうでしょうか。

 井ノ口:確かに、理想とすれば京都市行政の各局に出てきてもらって協議できるのが理想だと思います。保育所は保健福祉、いきセンやツラッティ千本という啓発の施設は、文化市民局、学習施設もふれあいの森という支援学級は教育委員会というように、局ごとに担当が分かれているので、関係者に来てもらって勉強会等をしてもらった方が、スムーズにみんなの意見を取り入れてやっていける。今後、各局、各団体に呼び掛けて勉強会をしていきたいと思います。

宮崎:これから、改良住宅にお風呂を付けていくと、浴場が廃止されていきます。山ノ本、市協支部で言うと清井町ではもう、風呂がついて浴場はなくなった。楽只千本でも2年後に戻って、みんなの部屋に風呂がついたね、となると市営浴場廃止になる。次は田中でも、そういう意味で、コミュニティの核となる場所がなくなっていくということが、大きな流れとしてあります。だから仕組みをつくる努力はしていかなければならないし、さきほどの住宅管理を自分たちでしていく等もヒントになる。

 村上:浴場がなくなったり、学習センターがなくなったりということ。せっかくある施設で、まだたくさん本もある状況で、子どもたちが活用できる取り組みができないだろうか。浴場の廃止という話でも出てますが、地域とすれば、それが何年後になるのかもわからない。

 宮崎:同和行政終結後の行政の在り方総点検委員会で、様々なことが廃止されたけど、その後の担当部署というのがないので、もったいない話ですが活用の方法が見つからない。あの当時の主眼は、特別と目に映るものは、全て廃止するのだということが主目的なので、地域のコミュニティへの影響などは考慮されることはなかったと思います。

神原:学習センターの本については、全て引き上げたところもあるが、醍醐地区では、情報をキャッチして捨てさせなかった。今は、児童館の管理にあります。

 宮崎:地域の施設の状況等については、一番よく知っているのは、地域の私たちだから、京都市の福祉や施策の状況の中で、例えば区として特養が足りていないということがあれば、隣保館の跡地の活用はどうかとか、こちら側から提案していくことも大切だ。ほかに質問はありますか。

 谷口:私は西三条なんですが、千本、田中、と事業がすすんでいくと、3番手にはうちの地域なのでは、と聞いているんですが、そうすると何十年あとか、とも思うが、なるべくこちらから提案してまちづくりを進めていきたい。僕も西三条で生まれてますが、今は外に出ている。その出ているということは人口が減っているということです。今後まちづくりでそのメンバーを呼び戻せるような計画や案があるのかな。一度出たメンバーを戻せるまちづくりの方法について教えてもらいたい。

 宮崎:市協の部会でも勉強してますが、改良住宅を建てた順番、つまり古い順でいくと、千本であると。次は田中、そして錦林、東三条、西三条と。北部の方が古い。しかしその順番を待ち、お金と行政を待っていたら、30年も40年もかかると。そんなには待ってられないということで、私は、解放同盟中央本部で住環境整備の担当をしていて、国交省の改良事業室との懇談会に出る機会があります。その中で、借り上げ型市営住宅という方法を使ったらどうですか、という話があった。民間と行政がコラボレーションして建てる住宅。民間の資金を利用する。例えばある地域に50戸の住宅を建てる必要がある。そこに5億円かかるとすると、民間が5億の出資をして建ててもらう。そして行政が借り上げて家賃保証しつつ、一般の市営住宅の公募家賃で行政が管理する。全国では一部の市町村で実際にやっている。これが、民間活力を利用した公営住宅の柱。千本のコーポラティブ住宅というのも一つの柱。それから、建物の店舗として、スーパーを入れてにぎわいをつくると。そのように、地域ごとに地域の特性にみあったアイデアを出していく。あと4年後、水平社100年には、各地域の姿が良い意味で変わっていることを願ってやまないんです。

 樹下:いま、宮崎議長の方から、各地域の姿は各地域の住民が描いていくということ。自分たちのまちは、自分たちでつくっていくという方向も必要なんだと思いました。具体的な例として、改良住宅ではありませんが、西大路八条の南側、八条市営住宅というのが非常に老朽化して全面建て替えをすることになった。そのうち半分は事業者が土地を買い取って建て、子育て世代が入居できるマンションを建てようという提案。八条の住宅再生については、市営住宅とマンションが共存する形となる。PFIという手法です。これによって、高齢化が進んでいた団地において若い人との交流が生まれることを進めると。事業者からの提案で面白かったのは、建物レイアウトで、市営住宅と公園と分譲マンションとが一体的な建物であるということ。お互いが交流できる。集会所の一部に私設図書館を設置して交流しようという提案もあった。こういった民間の活力も利用しながら、コミュニティの活性化を模索していく。

 宮崎:面白い提案もありますので、また部会などで勉強会をしていきたい。今日、提案のあった内容について、また一つずつ具体化に近づけていく努力をしていくということで、本日の第1分科会を終了します。

 

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