トップ

基調

講演録 1分科会 2分科会 3分科会 4分科会 5分科会

第49回人権交流京都市研究集会

  分科会

「共に生きることをめざして」

〜これからの人権教育の課題と展望を考える〜

                         大谷大学2号館2202教室

 

 実態調査報告

 

「外国人児童生徒に関する実態調査2017」についての報告

黒岩 寛史(京都市小学校外国人教育研究会

西村 府子(京都市立中学校教育研究会人権教育部会

 

パネルディスカッション

 「外国にルーツをもつ児童生徒に対する取組の現状と今後の展望」

コーディネーター  石田  誠(京都市立中学校教育研究会人権教育部会

パネリスト     浜田 麻里(京都教育大学)

宮地 法子(京都市立第四錦林小学校)

黒岩 寛史(京都市小学校外国人教育研究会

西村 府子(京都市立中学校教育研究会人権教育部会

助 言 者     浜田 麻里(京都教育大学国文学科 教授)

 

 分科会責任者  下岡 薫(京都市立中学校教育研究会人権教育部会

 分科会庶務   今西 和哉(京都市小学校同和教育研究会)

 司 会     山口 寛人(京都市小学校外国人教育研究会

 記 録     福島友里恵(京都市立中学校教育研究会人権教育部会

 

 

討議の柱

一人一人の違いを認め合い,すべての子どもが自尊感情を高めることができる学校づくり,すべての子どもの人権が保障され,アイデンティティの確立に向けて支援できる学校づくりをめざそう。

○在日韓国・朝鮮人児童生徒が民族性を自然に発揮できる学級・学校

○新渡日の児童生徒に対する教育保障の内容

○多文化共生を目指す教育への展開

 

◎「外国人児童生徒に関する実態調査2017」についての報告

 ○前回調査と比べて

 ・今回までに4回の調査が実施されている。

 ・調査対象は,京都市立の小・中・支援学校(小・中学部)に在籍する児童生徒のうち外国籍の児童および保護者が外国籍または外国にルーツをもつ日本国籍を有する児童生徒(基準日20171018

 ・小学校では若干増加,中学校では若干減少,全体として大きな変化なし。

 ・中国籍,フィリピン関の児童生徒が若干増加

 ・その他に入る国が38から41になり,国籍が多岐にわたるようになった

 ・外国籍の児童生徒が在籍しない,または少ない学校が25%程度

 ・学校で使用している名前は,本名が小・中ともに5%ほど増加。ただし大部分が日本名を使用

 ・中国籍の児童生徒が韓国・朝鮮籍の児童生徒を上回っている。地域で見ると伏見,南,右京区での在籍が多

  い

 ○日本語指導の必要性について

 ・2012年と比べて未回答が増加

 ・その他の国にルーツのある児童生徒に日本語指導が必要である

 ・外国籍児童生徒の学習状況については,「あまりできない」が多い

 ・韓国・朝鮮籍児童生徒の学習状況については,中学校において「できる・ややできる」の割合が増加

 ・中国籍児童生徒の学習状況については,小学校において「できる・ややできる」の割合が増加

 ・フィリピン籍児童生徒の学習状況については,中学校において「できない・あまりできない」の割合が減少

 ・韓国・朝鮮にルーツをもつ児童生徒の学習状況については,小・中ともに「できる・ややできる」が減少

 ・中国にルーツをもつ児童生徒の学習状況については,小・中ともに「できる・ややできる」が増加

 ・フィリピンにルーツをもつ児童生徒の学習状況については,中学校において「できる・ややできる」が増加

 

○外国人児童生徒の教育上の課題

 ・小学校では,韓国・朝鮮籍の「読み・書き」,中国籍では,2割以上が「書き」,フィリピン籍では,6割が「書き」4割が「読み」に課題あり。

 ・中学校では,全体的に見て3割以上の生徒に「読み・書き」に課題を感じている。

 

○外国にルーツがある児童生徒の教育上の課題

 ・小学校では,文化の違いによる人間関係に課題を感じているは増加

 ・中学校では,保護者対応に課題を感じている半減

 

(フロアから)

・当事者本人の意見や思いが明らかになる調査が必要なのではないか。(大人から見た子どもの姿だけではなく)家族環境が多様化しており,把握できない部分も多い。

・外国ルーツの児童生徒が拾いにくくなっているのではないか

 

パネルディスカッション  「外国にルーツをもつ児童生徒に対する取組の現状と今後の展望」

(西村さん)

・調査の未回答が多い

 ・外国人教育主任,人権教育主任が自校の実態を把握できていないのはないか。外国人教育主任,人権教育主任への研修の場がどんどん減少してきている。この状況が現場の意識に影響しているのではないか。

(フロア)

・自校の児童の様子から見て,改善されているようにあまり感じない。日本語を教えてくれる人が足りていない。

 

○学校現場でもどうしていいか分からない現状。研修の必要性

(宮地さん)

・トータルサポート校・サブサポート校には日本語指導担当教員がいて巡回して日本語指導を行っている。母語支援員も同様。

(フロア)

・人間関係の課題はどの国籍の人との人間関係なのか

(西村さん)

・外国にルーツをもつ児童生徒は少数なので,主に日本人ではないか。

 

(浜田さん)

・京都市では初期指導は特別の教育課程としているので全ての子ども達に日本語指導の権利がある。これをもっと訴えていかなければならない。

・授業の中で言葉が分かる・参加できる力が必要であるので別室で日本語を教えるだけではだめ。授業の中で力をつけていきたい。

(宮地さん)

・最初は学校に適応できるようにしていく。まず,日常になじめるように。家庭では母語で母国の暮らしをしている子どもが多いので,文化や言葉が分からないという場合も非常に多い。

・授業もがんばるし友だちとの会話もできているのでOKというわけではない。

 

○私たちが当たり前だと思っていることが分からない状況を把握しないといけない。分からないことを「分からない」と言える環境が重要である。

(西村さん)

・小学校で生活言語・学習言語を身に付けている子どもが多いので中学校ではルーツをもつ生徒がほったらかしにされがちである。

・日本生まれ日本育ちのルーツをもつ生徒にも日本語指導を受けさせている。ルーツがある=日本語指導が必要だという考えでやっている。

(フロア)

・外国にルーツのある子ども達の思いにまず想像力をもつ

・教育保障のために現場は何ができるかを考えないといけない

・どの位子どもが苦しんでいるか,悩んでいるか現場も保護者も意識が少なすぎる。

(浜田さん)

・少ないが支援の団体やボランティアもあるので活用してほしい。こういう情報を知らない人が多い。

・学校に情報が届いていても子どもに届いていなかったり,子どもに届いていても行く勇気がなかったりする。学校からもう少しのサポートを。

(黒岩さん)

・ルーツ児童は家と学校との往復だけになりがちだから,友だちづくりが出来る場やきっかけをつくっていく中で,日常で使う生活言語の力をつけることができる。サポート団体への参加や公園で遊ばせることも有効。

 

○学生の方たちがどんな思いでやっているのか,どんなことを学んでいるのか

(浜田さん)

・外国の人たちがどんな状況で日本で生活しているのかや実際に児童生徒と教師との関わりを見て,どうやって子ども達と関わっていくのかを学んでいる。

(フロア)

・制度はあるがそれが現場できちんと生きているのかを調査してほしい。

・数値は出ているが少数の子がどうなのか。少数派の苦しみはどうしていかなければならないのかを考えなければならない。

・学童と連携して入れるようにしたり,学童で外国の文化に触れるような話をしたりもしている。学校でも地域の人も参加できる形で外国の文化に触れる話をしたりもしている。PTAの方でも気軽に参加してもらえるような取り組みをしている。啓発授業などもしながら,共に生きていけるように様々な取り組みをしている。

・ルーツがあると一括して考えられないことも多い。何年前に日本に来たか,親の状況や家庭環境はなども踏まえて考えていかないといけない。

・その子自身の問題だけでなく,その子のいる環境や状況がどうなのかを考えていく必要がある。

・量的なデータでなく一人一人の細かい状況や事例を出し合って考えていく必要があるのではないか。

・どういう制度があるかサポートしていく手法を知っておかないといけない。管理職にきいてみることも大切。

・一人一人に違いがあるので,それに向き合う。その子が生きる場面を作っていかなければならない。全教職員で共通認識をしてみんなで声をかけてやっていくことが必要

○まとめ

(黒岩さん)

・学校によって認識や状況も異なるので,それも踏まえ考察していきたい。

(西村さん)

・過去の調査ではもっと細かいものもあるが,各学校の人権主任がどれだけ実情を把握しているかも分からないので,悩ましいところである。

・今日の意見を反映した報告ができるよう分析を進める。

(宮地さん)

・親より子どもの方が日本語を話せるようになり,親とのコミュニケーションが希薄になる等の問題もある。保護者と担任が連携しながらやっていかないといけない。

 

◎指導助言

・今回の調査データで,次どのような体制を作っていかなければならなのか明らかにしてほしい。

・外国人労働者が5年前から約倍になっている。日本は「隠れ移民大国」であり外国人労働者がいないと成り立たなくなっている。

・日本人にとってなくてはならない業種に外国人労働者が多い現状

・移民の受け入れはしないので,これから先も政府の外国人への支援は期待できない。

・外国にルーツをもつ子どもの課題を捉える視点は必要であるが一人一人の子どもを徹底的に大切にすることは変わらない

・子どもの学びの断絶をつなぎ合わせる(学習面に限らず,心理的にも文化的にも)つなぎ合わせつつ,複合されたアイデンティティを確立するサポートを学校がどうしていけるか。

・日本語指導が必要な児童生徒の12.7%が母語が日本語である状況

(支援の例)

・視覚的教材

・授業の流れがわかるよう見通しを示す

・ワークシートをつかって書くサポート

・漢字にふり仮名をつける

→授業での支援はクラス全体に波及効果がある。

(家庭と学校の文化をつなぐ)

・信頼関係の構築が必要

・見えにくい文化の違い。その行動にある背景まで考える

・国籍やルーツに関係なくすべての子どもが尊重され,学ぶ権利を持っている

・学ぶ権利の保障をしてあげる。

・多様性を強みにする学校づくりが求められている。

 

 

戻る