ごあいさつ

開催要項

第一 第二 第三 第四 第五 第六 第七 第八

TOPへ


第34回 第五分科会

第五分科会 【同和保育】


          これからの同和保育を考える

        〜部落解放をめざす保育所の役割、地域・家庭の役割〜

 

  日 時  2003年2月15日(土)午後1時30分〜4時30分

  場 所  みやこめっせ 特別展示場

 

  ■パネルディスカッション:テーマ「保護者子育て調査アンケートから見えてくるもの」

 

       コーディネーター  井上 寿美(子ども情報研究センター、関西大学)

       パネリスト     山田 昭子(保育所)

                 今井 利美(保育所)

                 細田 千夏(小学校)

                 隅田 晉哉(児童館)

 

    参加者数 83名(保育所職員53、教職員12、運動団体・保護者10、行政その他8)

 

内  容

 

 同和保育は、同和地区の保護者の就労保障と児童の就学前教育の位置付けから始まった。そして、一人ひとりを大切にする保育を進めるとともに、子ども同士の交流や家庭・地域の育児力を推進するため、周辺入所や家庭支援推進保育事業、地域子育て支援ステーション事業に取り組んできた。さらに、いのちと人権をはぐくむ子育て支援の拠点をめざして、地域子育て支援拡充事業などを展開している。

 前回のこの分科会では、保育所、小学校、保護者、地域の連携や関わりについて、遊びと学びのつながりなど、子どもの育ちにとって何が大事かを視点に据え、それぞれの取り組みや意見を出し合った。

 今回の分科会では、保護者「子育てについてのアンケート」調査の結果をもとに、子育ての実態と課題を明らかにしながら現場での実例や取り組みの報告を交え、保育所などが子育て支援において果たすべき役割について討議を行った。会場からも多くの意見が出され実りある議論を行うことができた。

 

1 保育所からの報告〜保護者アンケートから見えるもの〜

 

 保護者の現状と意識を把握し、保育所運営や家庭支援、子育て支援に生かしていくための資料とするため保護者アンケートを実施した。結果から若年層の支援が重要な課題であると受け止めた。子育てについてよく話し合われている割合が高いが、そうした家庭では子育ての負担感が少ない。生活リズムはほとんどの家庭で確立できている一方、仕事の都合で困難な方や気にしない層もいる。食生活や絵本の読み聞かせの大切さはよく理解されているが、実態としてできていない家庭への支援が課題である。

 子どもを大声で怒鳴ったり一方的に叱ったり手が出てしまうなど子育てに悩んでいる保護者が少なくない。親の乱暴な言葉や暴力が子どもに影響している場合もある。こうした保護者と一緒に考えていくことが課題である。おたよりを読んだり、参観が多かったりなど保育所への関心は高い。小学校入学について、友達関係の不安が一番多く、自立や学校生活への不安もある。今、交流保育や周辺入所の中で子どもの社会に広がりが出ており、自己肯定と他者尊重という人権を大切にする心を育てることが求められている。保育所に親子とも満足している方が多い一方、保育所を変わりたいとしたり親は不満と思ったりしている層もあり、保育所としての努力がさらに必要である。保護者間のつきあいは行事を通してという回答が多数である。一時保育や周辺入所が進む中で地区内外の保護者が一緒に役員をしたり自然に交流したりしていく姿が増えている。

 

2 小学校、児童館パネリストからの発題

 

[コーディネーター] 課題がある少数の回答者にも目を向けることが重要。意識していてもできないところを支援することが大切。保育所と同じく学校や児童館など地域のさまざまな機関が子どもたちを見ているが、それぞれから発言をお願いしたい。

[小学校] 小学校でもアンケートをとれば同じような回答傾向になるのではないか。家庭状況の背景にある親の力でもどうにもならないものに目を向ける必要がある。部落差別がそれである。朝ごはんが用意されていない家庭においても、その背景にあるものを見ることが大切である。

[児童館] 児童館は0歳から18歳までの子どもが遊びを通じて互いに育ちあう場である。当児童館では「人、自分、ものを大切に」を心がけている。5年前は人を傷つけるような言葉が飛び交っていた。頭ごなしの禁止命令は、結局、よそで悪い言葉を使うようになるだけであり、指導・命令するのではなく、子どもたちに「お願いして」という思いでなくそうとしてきた。知的障害のある子どもも来ている中で、「あほ」という言葉が人を傷つけるというようなことなどを子どもたちと向き合ってじっくりと話すようにしている。父母の会とも連携してやってきた。こうした結果、今では随分と乱暴な言葉が少なくなってきた。

 

3 パネリスト討議

 

[コーディネーター] 生活リズムの崩れについて具体的にどう対応し工夫しているか。

[保育所] 土日に大人の生活に振り回されているためか、月曜の朝はホワーとした状態である。朝ごはん食べてこないで泣いている子どもを抱きしめてあげている。保育所がほっとする場所であることも大切だと思う。

[保育所] 母を説教してしまうことがあるが、そうではなくて子どもが困っている状況を母親に気づいてもらえるようにすることが大切と思う。そのため、子どもが自分の状況を理解し表現できるように手助けするようにもしている。

[コーディネーター] 子どもの気持ちを代弁することが大切。育ちのプロセスを継続しながら小学校をスタートさせていく上で具体的な取り組みを話してほしい。

[小学校] ある小1の子。保育所の時期から朝起きられずに休みが多かった。家に電話したり、訪問し関わるようにしていった。また、別の小1の子については就学前の妹の生活リズムの確立も意識しながら訪問してきた。今は、地区外でもしんどい家庭が増えており、同和地区において培ってきたこうした方策を生かしていきたい。

[コーディネーター] 子どもは年齢でなく個別に違う。ていねいに付き合っていくこと。本来1年生でする必要のないことでも状況に合わせ取り組みを始めることが大切。

 

4 会場からの質問

 

質問1 きれいな言葉、きたない言葉の区別の基準は何か?

[児童館] きたない言葉とは相手を傷つけたり見下したりする言葉。呼び捨てもできるだけしな いようにしている。

[会場] 地区で育ってきたからていねいな言葉は苦手。親の言葉も仕事でいろいろである。相 手を傷つけないかぎり自分の言葉でよいのではないか。

質問2 土日に子どもの生活リズムが崩れている親に対してはどのように接しているのか?

[保育所] 子どもの具体的な状態を説明し、生活リズムの大切さを話す。親の生活も聞くが受 容するよう心がけている。頭ごなしの指導はしない。

質問3 同和教育の積み重ねは若い親にどのように現れているか?

[小学校] 解放に向かって積み重なっているかは疑問。結婚差別や就職情報の入手問題など まだまだ差別がなくなる状態ではない。

[保育所] 法期限切れたが地区の状況は変わっていない。子どもが自分の存在を認めてくれ  ていることを感じられるようにするために地区内外を問わず保育士は仕事しなくてはならな  い。

 

5 会場からの意見

 

[会場] 保護者としてアンケートを書く上ですごく迷った部分があった。児童館も含めた地域の 連携の内容を教えてほしい。

[保育所] 択一式にしたことが迷われた原因と受け止めている。

[児童館] 養正では月1回地域の関係機関と互いの子どもの情報交換などを行っている。

[会場] 今まだ言葉や朝起きられないことが問題として挙げられていることに愕然とする。結婚 差別も残っている。地区に残った人は同和教育の積み重ねから取り残された人。地区はもの すごくきびしくなっている。

[保育所] 昔は親に指導するばかりであったが、今は子どもを真ん中に置いて生活状況を見な がら話すようになっている。拡充事業や周辺入所でいろんな保護者と話し考えられるようにな ってきている。

[地域] まだ地区内の保護者と周辺の保護者とがちょっと遠慮している部分がある。

 

6 最後にひとこと

 

[保育所] 同和保育をしてきたことが、今の子育て支援事業にすんなりとつながっている。

[保育所] 法が切れても同和保育は変わらない。周辺からどんどん保育所に入ってきてもらい たい。

[小学校] 同和教育を自分の中でもっときっちりと確立したい。

[児童館] 一律平等がよいのではなく、障害児など弱者に手厚くしていくべき。

 

7 主催者まとめ

 

 5年間分科会に携わってきたが、今回ほど真摯な討議はなかった。現在はこれまでになく部落内外の人々が交流するようになってきているが、一方で若年層が部落を後にする厳しい時代であり、同和保育・同和教育をさらに進めていきたい。

 

戻る