ごあいさつ

開催要項

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第34回 第七分科会

第七分科会 【解放教育U】


                              他者との共生をめざして

[日 時]  2003年2月15日(土)

[場 所]  国際交流会館

[司 会]  土佐雅一・松川洋祐

[記  録]   若松栄一

 

  パネリスト@ 齋藤滋之さん(中同研)「新渡日の生徒と関わって」

  パネリストA 高 文吉さん(東和小保護者)「在日を生きる」

  パネリストB 原田秀樹さん(向島小PTA)・永田敏さん(小同研)

          「打楽器演奏・舞踊を通してコリアの文化を」

  パネリストC 寺井秀澄さん(全外教事務局長)

          「反差別・人権・共生を基盤として」

 

T 斉藤さん実践報告内容要旨(1:41〜)

 中国帰国生徒Aの心の背景に迫る取組を話されました。

・いのちの電話との連携(母語との出会い)

・母語指導の必要性

・学校体制として新渡日の生徒をサポートする必要性など今後の課題です。

U 高さんの報告内容要旨(2:15〜)

 同和関係校からT小学校へ6年の時転入後,教師の取組の中で本名を名乗ったこと。ソウルオリンピックの聖火ランナーに選ばれ,現在社会人として在日を生きることの様々な問題について語られました。

【討議T】

Mさん… 高さんを支えた先生お二人のお話をぜひうかがいたい。

Kさん…高君が今こうして報告している姿を見て,うれしい。高君のエネルギーは,きっと 何事もできる力につながると思って接してきた。立場の違いを大切にし,本名を名乗ることは,間違ってなかったと思っている。

Oさん… 当時,外国人教育を進める中で周囲の反対もあった。本名を名乗らせることへ 第二の「創始改名」ではないかという声もあった。民族学級の時間を保証する取組や日本人教師が民族学級を勧める取組が外国人教育の第一歩であった。

Bさん… 「関西生命線」他の言語のライフラインはあるのか?

齋藤さん… 他の言語を扱うものもある。他文化共生センター京都が作った「京都の識字学級」というチラシがある。

寺井さん…奈良の保護者の言葉で印象的なものがある。「いつまで『ニューカマー』っていうねん」という言葉。新渡日の少数点在が続き12年が経過している。総合学習で「朝鮮の文化・日本の文化」を学習していた生徒の「歴史を学ぶことは未来をつくることやなあ、先生。」という言葉。1960年前半からアメリカで行われてきたアンチバイアス教育・他文化教育。その中に低学力克服プログラムがあり、黒人に白人と同じ教育プログラムを行った。しかし、格差が縮まらなかった。これはなぜか。黒人は黒人としてあり、「白人と同じように」ではないということ。同様のことは部落問題の解放教育でも実証済み。齋藤さんのお話の中にもあったが、新渡日の子どもたちに「直接型日本語教育」が行われている。つまり、日本語による日本語指導。これは、皇民化教育歴史の罪を知っている私たちがよく考えなければならないこと。生活言語と学習言語とは異なる。コミュニケーションがとれているからといって授業が分かるはずがない。母語保障抜きでの学力向上はあり得ない。民族的アイデンティティの確立は、行政的支援と教員の力だけではなし得ない。外国人支援を行っているNPOとの連携が重要。奈良では,母語別で進学ガイダンスや就職セミナーに取り組んでいる。

V原田秀樹さん(向島小PTA)・永田敏さん(小同研)

    「打楽器演奏・舞踊を通してコリアの文化を」(3:15〜)

B原田・永田さんの報告

 学校教育とPTA・地域が連携し,コリア文化の理解を深める啓発活動を報告されました。京都市で地域を巻き込んだ人権啓発のひとつのモデルになる内容であった。

 

 

W寺井秀澄さん(全外教事務局長)

          「反差別・人権・共生を基盤として」(3:40〜)

C寺井さんの報告

 部落問題との出会いから在日朝鮮人教育への取組を具体的な実践を基に語られました。さらに,新渡日の子どもが抱える様々な差別の現状や今後の多文化共生教育の方向・課題について教えていただきました。

 

【討議 U】

Kさん…京都の古くからの「壁」を感じる。取組を進める中で、向島ではどのようにして地域を巻き込んだか、また、どんな抵抗があったか。

永田さん…各種団体からもあまり好意的な反応ではなかった。向島にあっても他の所と 同じだと思う。啓発冊子を配るにあたっても実行委員会が押しつけたというかたちにはしなかった。反省会でも特に批判も出てこなかった。6年間の実績が築き上げたものだと思っている。

Cさん… 共感して聞いた。寺井さんの「教師だけでは切り開けない」というお話に実感した。本名を名乗っている人の話を聞くことも大切だが,本名を名乗ることに悩んでいる人たちの思いを聞くことも大切ではないか。

Yさん…子どもを教育する上で成功例もあるが,「失敗例」もあれば聞かせていただきた い。向島の取組について,前年度和太鼓に取り組まれたが,その際「皮革産業」などの被差別部落とのかかわりについてはどう考えておられたか。

永田さん…考えてはいたが、それができる土壌ではなかった。(和太鼓の件)

齋藤さん…教育実践は,失敗の積み重ねであった。その「失敗」をつぎの糧にしてがんばってきた。

Iさん… 在日の子どもに一生懸命かかわってくれる先生ほど、解放教育にかかわってこられた先生だった。表向ききちんとできる子どもでも問題を抱えている。そこをしっかり見てくれる先生もいた。ひとりひとりの子どもをどう見ていくのか。解放教育でやった失敗を在日コリアンで繰り返す。在日コリアンでやった失敗を今度はニューカマーで繰り返す。「失敗」をどう生かすか、どう糧とするかが問われているのではないか。

Oさん… 以前京都市の同和教育方針の中で、学力保障が一番にあげられていて批判したことがある。学力も大切だが、アイデンティティや自尊感情などについてもっと考えていかなければならない。解放教育が被差別の立場にある全ての子どもたちにつながっていくことに少しずつ向かっていけばと思う。そういう意味で,解放教育は,今から始まる。

Kさん…最後に言っておきたい。「帰化申請中」という言葉が気になる。その子どもたちには声もかけられないのか。また、ダブルの子どもについて。在日が日本人と結婚するケースが今や90%。見えなくなっている。どこにも属さない子どもの現実。ひとりひとりの家庭の声をしっかり聞いてやってほしい。

 

各パネラーから一言…

5:15 閉会

市集会を振り返って

 同和教育・在日外国人教育・多文化共生教育を解放教育という反差別・共生教育の土俵に載せ,あらゆる差別に共感し,実践していける視座と実践の方向性を模索してきました。今回の集会に参加された方にある程度,解放教育の理念や方向性を提示できたように思います。 特に,奈良の寺井さんには,具体的な実践や他府県の事例を通して反差別教育の展望を示して頂きました。

 

参加者の感想や意見

・高さんの生きてきた道,それに関わった先生方との熱い関係性が感じられました。在日の方から自分のルーツを認識し,過去の歴史を振り返りながら未来を創造することの難しさとすばらしさを学びました。来年もこの続きを聞いてみたい。

・同和,在日外国人に対する問題は,学校だけでは,解決できない。保護者・地域・各種団体と連携をとり,母語保障,出会い保障をしていかなくてはならない。今日の提案を聞いて共感し,意識もものすごく変わることができたと思う。

・Tくんを支えるのが斎藤先生しかいなかったことにこの問題の厳しさを現している。他の先生方とどのような連携があったのか聞きたいとおもった。

・自分が無知であることを知りました。まず,自分をしっかり持って問題に取組みたい。

・参加して気持ちが新たにがんばらねばとの思いです。各方面からの声,在日の方からの生の声が聞けて大変参考になりました。

・失敗を糧に各学校へ広げていくことを学ばさせて頂きました。

・子どもに対して教育を押し付けるのではなく,育て伸ばしていくことの大切さを再認識させられました。日本語で教育を押し付けるのではなく,子どもの置かれている状況,生き様,背景を十分に理解し、心を開き,将来を切り拓いていける力を育てたいといもった。本当の意味で前提条件を考え,学力をつけていかなければならないと思いました。

・一人一人の子どもたちをしっかり見据えて,その生き方に働く教育を進めていきたい。人と人との結びつきを深め,地域や団体の方々の力を借りながら関わっていきたい。

・母語での心や教育のサポート体制の必要性を強く感じました。コリア文化だけでなく,学校にいる他の外国人の母語文化を積極的に皆が学ぶということが,その個人や全員のために良い方向に繋がるのではないでしょうか。

・具体的な事例を多く話してもらえて良かった。特に、中国人の子どもたちと先生との関わりの話は,印象的だった。深い愛のある関わりは,その子になんらかの影響を与えていたと思う。寺井先生が「みんな同じ。」ではなく,「みんな違う。」ということをもっと広げるべきだという言葉も印象に残った。校長先生の一言から通名で通学するようになったという生徒の話から特に感じた。

・パネラーの方々の話は,最初のうち論旨が噛み合わないのではと思っていました。しかし,質疑や寺井先生のお話から「個を大切にする教育」「学校を拠点とした地域を巻き込んだ教育」の重要性についての事例であることが見えてきました。

・各パネラーの話から全体の問題点が浮き彫りになり,今後の多文化・共生教育への方向性を見出せたようだ。しかし,制度として行政をどう動かすかという部分が今後の課題です。ネットワークを広げる必要性がある。在日に誇りが見出せない子どもたちの事例や今後の在り方を模索していくことが大切。この第七分科会の研究討議したことをもっと広げていくために全市に具体的に発信していってほしい。

・人と人との出会いが人生を左右するなと思いました。相手の気持ちをわからないまま,一方的に思い込むことが差別や偏見であるのでしょう。しっかりと話し合うことや何らかの形でコミュニケーションをとる事が大事だと思いました。

・この仕事(教職)が一人の人間の生き方に強い影響を与える。たいへんですが,やりがいのあるものだと改めて思いました。ありがとうございました。

 

以 上

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