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第44回人権交流京都市研究集会

  分科会

人権のまちづくり

「福祉で人権のまちづくりをめざして」

                会場 大谷大学2号館2301教室  

 

「狙われています、あなたの個人情報が!」

  

   シンポジウム

     「戸籍・住民票等の大量不正取得事件の真相と私たちの対応について」

 

   コーディネーター  

          菱田 直義(部落解放同盟京都市協議会事務局長)

 

@映像で知る個人情報流出

 

A個人情報の大量不正取得事件についての概要

神原 弘明(部落解放同盟京都市協議会人権確立部会

・全国的な事件の概要及び京都府内の現状について

・部落解放同盟としての取り組み状況について

 

B京都市内で明らかとなっている不正取得の実態と取組

岡安 健京都市文化市民局地域自治推進室市民窓口企画課長

・はじめに

・プライム事件への取組

・事前登録型本人通知制度について

 

 

菱田:今日のコーディネーターをさせていただきます部落解放同盟京都市協議会の事務局長をしております。少し私の話をしますと、仕事は京都市の職員で今日の話の大きな柱の一つである、住民票や戸籍を扱っている区役所の市民窓口課というところで係長をしております。一方で、運動でも要望なり指摘をしていく立場で、言った分返ってくる立場でありますんで、非常に難しい立場であります。今日は、京都市、解放同盟、弁護士の立場からの発言もあるということで、逆に私自身の頭の中のジレンマを、それぞれ代表して整理していただけるのではないかと期待しています。

まずは、「クローズアップ現代」のDVDを録画したものをちょっと見ていただいて、現実に起きているのはNHKさえも取り上げる大きな事柄だと思いますので、個人情報の不正取得、情報屋ということを焦点に当てている、『闇のネットワークを探る』という番組がありましたので、その部分を少し見ていただいて、まず導入部分としたいと思います。

 

−DVD鑑賞−

 

菱田:今、DVDの中では、情報源として携帯電話や車両情報、勤務先、銀行口座残高等大きな話としてはあったんですけれども、今日のシンポジウムでは、「戸籍・住民票等大量不正取得事件の真相と私たちの対応について」ということで、戸籍・住民票を中心に話を進めさせていただきます。住民票というのは簡単に言うと、住所登録で住所・氏名・生年月日・性別あるいは世帯主・世帯主との 続き柄等が載っているんですが、個人ごとの台帳を世帯をワンセットとして管理しているというイメージです。戸籍というのは、もっと生々しい言うのかな、身分事項を記載しているんですが、「本籍地」「いつ生まれて、いつ誰が届けに来たか」ということが書いてある。結婚したら、誰々と婚姻して、どこどこに新しい戸籍をつくったよと。で、夫婦プラス結婚してない子どもというのが構成の単位になります。そこで住民票ですむ用事なのか、戸籍が必要なのかというのは、請求する本人もわからない場合があるので、その辺の問合せも非常に多いです。それから謄本と抄本という区別が住民票にも戸籍にもあるんですが、謄本は、登載されている方全員分のことで、抄本というのは、その中の一部です。5人家族であれば、一人分、五分の一でもその一部ですし、五分の四でもその一部。五分の五のときは、全員分になるので謄本という呼び方をしています。そういう記録は区役所の方で台帳も見れるし、管理をし ていますが、そこで戸籍、住民票等の大量不正取得事件が発生したということがあります。その実態について、部落解放同盟の方で把握している情報、全国あるいは京都府、京都市の現状、こちらの方で調査してどういう把握をしてるかというのを一人ずつ、自己紹介がてらそれぞれの立場でお話をいただきたいと思います。とりあえず一巡をさせていただきますので、今日お越しいただいているのは、部落解放同盟京都市協議会の人権確立部会の神原さん、京都府連の事務局であり、直接の担当ということで、一番詳しい方をお呼びしています。最近発生した大量不正取得事件の概要といいますか、数字も出てくると思いますが、ご説明いただきたいと思いますのでよろしくお願いします。       

 

神原:実務が一番詳しいだろうということで、今日パネラーということになりました。部落解放同盟として現在、大量不正取得事件について当然戸籍の問題を中心に真相解明を行っています。戸籍はかつては誰でも見れたのが、人権侵害をおこすということで、現在では8つの国家資格を持った人たち、弁護士とか司法書士、行政書士等8つの資格があって、その人たちが特別に認められた職務上の請求用紙を使って戸籍謄本とか住民票等を取ることができる。第三者は取ることができませんから。それを使って不正請求を繰り返したわけです。一昨年の11月にプライム総合法務事務所というところを経由した事件が明らかになり、そのときには請求用紙そのものを偽造をして、2万枚偽造して約1万枚不正に使用したということが報告されました。何という数字だということで、開示請求を進めましたけど、昨年、それを上回る2万件の不正請求というのが大きなニュースとして報道されました。今開示請求を行っています。経過から言うと、京都府連では11月の執行委員会で全市町村で各役所に開示請求を行う取り組みを進めております。群馬ルートと言われる方では、谷口行政書士名義と谷口を使ってた大沼という元行政書士がどちらも偽造された請求用紙を使ってたということが明るみになってます。現在のところ、京都府内では谷口名義の請求用紙の開示は終わっておりまして、18の市町村から309件、今日の冊子のところには京都市の大沼名義のものはまだ未開示だったので書かれておりませんけれども、谷口と大沼、両方の結果が出ましたので、京都市分も含めて今日のこのスライドでは出させていただいております。開示結果は309件、内訳としては、戸籍関連が203通、住民票関連が158通が明らかになっています。大沼につきましては、戸籍住民票結構取っております。ただ、府内のすべてがまだ開示請求は終わっておりません。偽造請求用紙がある限り、同一番号の用紙、右肩に請求番号が書いてあります。弁護士さんの場合は、1冊まるまる同じ番号だそうですけれども、行政書士とか司法書士の場合は一枚一枚番号が違います。同じ番号があってはならないはずですけれど、出るわ出るわで、谷口の場合、同一番号最高で8枚出てきております。7枚出たのもあります。6枚もありますし、5枚4枚とかはざらに出てきております。309件の内、ダブってないのが19件のみ。 (OHCで映し出した)この請求用紙にははっきり映っておりませんけれども、本物の請求用紙はコピーすると無効という文字が出てきます。複製に使われないためには、本物の用紙は無効と。ところがこの請求用紙、偽造された用紙ですけれど、コピーしたら無効という文字がちゃんと出てきます。「無効」と出るように偽造してる。透かしを入れようが何しようがすべて偽造してしまう。今、こういう手口で不正請求はやられてます。

請求には、請求事由が必要ですが、例えば、慰謝料の請求措置業務という名目のものがあります。詳しい理由として、「依頼者家族への対象者家族からの脅迫・恫喝的言動による精神的被害に対する慰謝料の請求措置を講じる、疎明資料を不法行為により宣告する通告書の作成業務になります」こういう名目で請求してるわけですけれど、本当にこういうことがあるんだったら、これは警察の領分と思いますし、何も偽造された用紙を使わなくてもホンマもんの行政書士ですからホンマもんの用紙で請求したらいいわけですけれど、偽造用紙でこういう請求をしている。おそらくこの理由は、全くの嘘だと思います。で、これは被害者への通知は、全てはできてませんけど、被害者がこのことを知ったらどんな風に思うか。で、この右肩の番号がありますが、違う番号にも、先ほどの細かい請求事由が一言一句全く同じに書かれている。つまり、ひな形をもって、いろんな理由をつけて請求しているようです。左京区ですが、番号順に並べると、「慰謝料の請求」というのが4枚 連続出てくる。長岡京市では「慰謝料請求」が6枚出てくる。宇治市では3枚連続。ちょっとはさんで、また3枚連続。で、宇治市で「遺産分割請求業務」というのが番号で7枚出てくる。普通様々な理由で請求すると思いますけど、同一の請求 事由というのはまずありえない。まだまだ、こういう不正請求は出てくると思います。

先ほどのDVDではあまり詳しい事件の構図はありませんでしたが、事件としては愛知県警の捜査員、担当者の携帯電話に娘の名前が入っていて、脅しの電話がかかってくる。捜査をやめろと。それがきっかけで発覚するわけですが、なぜ、携帯電話で娘の名前を知ってるんだということで、警察が捜査に乗り出します。住民票が、戸籍謄本が取られたんじゃないか、ということで調べたら、司法書士の名義であったことから、どんどん広がっていきます。一昨年11月、探偵会社であるガルエージェンシーの経営者、プライム総合 法務事務所の経営者奈須。司法書士の佐藤、元弁護士長谷川が逮捕されています。司法書士らが逮捕されましたけれども、携帯番号は一体どうやって知ったのかということもあります。住民票や戸籍をとっても、携帯電話の番号なんかはわかりません。どうしてかと、調べていくと、 携帯会社で捜査員の名前で検索する、端末をたたくと、捜査員の住所、電話番号もわかる。そこから、探偵業者を通じて本籍地の入った住民票を入手し、戸籍も入手するという。こういうふうに、広がっていったんです。

探偵業者への捜索を続ける中で、さきほど、ソフトバンクでしたけど、さらにauとかドコモとか、全ての情報漏洩がわかってきます。ハローワークでは職歴情報。これはおそらく大手の会社が 転職の経歴を知ろうとして依頼したんだろうけど、これについては捜査がこれ以上及ばずに一切明らかになっていません。長野県警の二人の巡査部長、関東運輸局の職員からは車両の情報、で、関西電力の子会社、船橋市の職員というふうに、どんどん逮捕が続き、今年の1月には、東京のグループの代表が逮捕されています。逮捕は34人となっています。様々な情報が流れてましたけど、群馬ルートでは、群馬のベル・リサーチという探偵業者に先ほどの情報屋が依頼し、そこから東京の元行政書士の大沼という探偵業者を通じて、情報を入手する。こういう大がかりな事件に発展して、今、裁判が続けられています。情報屋の片割れは、罰金250万円ということで判決が出ています。様々な判決が出ていますけど、長野県警の二人の巡査部長の関係は、まだ新聞報道なども一切なく、詳細についてはわかりません (2月27日有罪判決)。

様々な大量の個人情報が売買されていますけど、それが、一体何に使われているのか。プライム事件で明らかになっているのは、戸籍の関係は、結婚や浮気調査であると。これが8〜9割占めると。その内半数が、部落かどうかの調査。ただ、調べ られた側が必ずしも部落民とは限りませんが、身元調査そのものが差別調査だと言えます。その他にも、ストーカーであるとか、偽造パスポートの取得、それから偽装結婚、偽の養子縁組、消費者金融から、要は名前を変えれば、サラ金からなんぼでも金を借りられます。偽の養子縁組で、次から次へ金を借りるという、こういうこともあります。

で、車両情報につきましては、例えば、高級車を盗んで転売するためではないか、とも言われていますけど、理由の詳細、依頼者についてはほとんど、現在の所明らかになっていません。裁判でも明らかになっていません。というのは、1万件の不正取得をしても、10件の不正取得をしても、刑法で罪は決まっています。だから、有罪にできる証拠さえあったらいいのであって、それ以上の捜査は、警察も検察もしないために多くの被害者にとっては、いまだに、被害を受けたことも知らされていないという実態にあります。だから、被害者が人権回復するためには、必ず、行政の方から「おたくの戸籍謄本とられていますよ。住民票とられてますよ」という通知をしなければならないと思います。部落解放同盟としてこの間、一刻も早く知らされてない被害者に通知するべきだという取り組みを進めてきました。かつては、京都で一番進んでいるのは、被害者の通知制度をすべての市町村がもうけている、これは、全国でも京都 が唯一です。ただし、不正の認定が裁判でされていると、以前は、不正請求した場合簡易裁判所に通告して、全件を不正認定する。刑事罰ではなく、行政罰でしたから、簡易裁判所で一括して 、したわけですが、今は、依頼者を処罰するようになったのはいいんですけども、1万件あっても10件でも、起訴ということで、判決で被害者が裁判で認定されないと、京都市では被害者に通知し づらいということがありました。だから、部落解放同盟としては全てを認定するのではなく、被害者が明らかになっている。例えば今言ったように、明らかに偽造であることがわかっているのであれば、通知のための要領改正を全市町村に訴えて、改正したところから言いますと、福知山市、宮津市、21日に京都市が要領改正してついこの間、2月に通知をされたようです。この不正請求ですけども、今に始まったことではなく、今からちょうど10年前、2003年に、京都市内の司法書士が、戸籍謄本等を不正取得して、それは実際に身元調査、結婚差別に使われたという事件がありました。その女性は、自分が部落出身ということを知らずに、地区外に住んでいて、ある日突然、彼氏から「うちの家族会議で、お前の両親の系統の戸籍謄本を見せられた。お前は同和だから反対すると家族に言われた」と告げられた。その女性にとっては寝耳に水の話で、泣きはらした後、部落解放同盟に電話して、相談に乗ってほしいということから、事件が発覚したということがありました。その時には、開示請求すると、京都市内の4つの区役所から、その女性の両親双方の系統の戸籍や除籍謄本等がとられていました。司法書士については、後に業務停止になって、その後廃業しました。2005年には、宝塚や大阪で 連続して行政書士が不正請求を繰り返し、あるいは探偵業者に用紙を横流しするということで、宝塚の行政書士は、京都府内で18件の不正請求。これは、実際結婚差別にも使われて、裁判にもなりました。2007年には三重の行政書士、これは京都で11件、市内で5件の不正請求。2008年には 神戸の司法書士が京都で126件の不正請求で、内京都市内は103件という。ずっと不正請求の事件が発覚しています。こういう流れの中で戸籍法の改正。原則公開から、原則非公開ということになりましたが、まだまだ課題は多く抱えています。この先の話は、また後の討論で行いたいと思います。

 

菱田:ありがとうございました。今回発覚しました1万件あるいは、さらに2万件という件数の不正請求が発覚したと言うことですが、冊子に府内の一覧表があります。プライムの内容を見ていただくと、一昨年に情報公開の開示請求をしてその結果が、京都市内でいうと78件ありました。こちらを先行してやっているんですが、群馬ルートについてはやっと集計して、昨年に情報開示請求して、ここ最近やっと結果が出てきたので、24日の集計です。プライムにおいて取られた側の人たちにどう対応していくのかということを、もちろん、行政内部で十分検討していただきながら、解放同盟としても話をしてきました。そのあたりを、今日は市民窓口企画課長の岡安さんに来ていただいているので、制度的なことも含めてご説明いただきたいと思います。

 

岡安:私の方からは、不正取得に係わる京都市の取り組みについて少しお話させていただきます。先ほど話に出ましたように、平成17年から平成19年にかけて、兵庫県宝塚市や、三重県で行政書士による職務上請求用紙を悪用した戸籍や住民票の不正取得事件が発覚し、過料処分が科せられました。その時の過料額というのが、1件につき1,000円という、非常に安い金額で、簡易裁判所の判決がされていたという状況があります。そういった状況の中で、平成10年に戸籍法及び住民基本台帳法は、それぞれ改正されて、原則公開から原則非公開ということになりました。本人確認が厳格化されるとともに、不正取得に係わる罰則も、5万円以下の過料及び10万円以下の過料から、30万円以下の罰金というふうに罰則の強化が行われました。また、平成196月に「探偵業の業務の適正化に関する法律」が施行され、探偵あるいは興信所による差別調査を禁止し、営業の停止または廃止を命ずることができるなどの行政処分とともに、6ヶ月以下の懲役または、30万円以下の罰金に処せられるなどの罰則規定も設けられました。

 京都府の市長会でも、戸籍等の不正取得事件への対応が話し合われ、京都府下の市町村で被取得者の方への通知を統一して取り組んでいこうということになりまして、京都市としましても個人情報保護審議会にはかったうえで、平成2210月に「住民票の写し等の不正取得に係わる被取得者への通知実施要領」というのを作成しました。この実施要領が、最初に住民基本台帳法では、市区町村長は住民に関する記録の管理が適正に行えるよう必要な措置を講じることとしている。また、京都市個人情報保護条例においても、個人情報の保護に関し、必要な措置を講じることを求めている。偽りその他不正な手段により住民票の写し等の交付を受けた者に対しては、住民基本台帳法や戸籍法等より罰則が科せられるが、住民票の写し等を不正に取得された者に対し通知する法令上の規定がなく、不正取得について、被取得者は把握する方法がない。被取得者に対する通知を行うことが、個人情報の保護及び、基本的人権の擁護につながることから、被取得者に対して不正取得の事実を知らせる措置を行うものである。この要領は不正取得された事実を被取得者に通知することにより個人情報を管理する行政としての責任を果たすとともに、個人情報の適正な管理の推進及び通知の実施を通じ、将来の不正請求、不正取得を抑止することを目的とする 、としています。

国や京都市のこうした取り組みにもかかわらず、先ほどのDVDや神原さんのご指摘のように平成23年度以降、相次いでまた不正取得事件が発覚しているという状況にあります。こうした状況を踏まえ、京都市としてもさらなる対策が必要という認識の 下に、京都府市長会を通して国に対して、職務上請求に対し添付書類を義務づける法改正の要望をするとともに、法務局やハローワーク、近畿財務局など国の機関、京都府で構成する京都人権啓発 行政連絡協議会というのがあるんですが、そういうところを通して、職務上請求用紙を使用する8士業団体、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、 海事代理士、行政書士という8業種なんですけども、こういう方々に対し、職務上請求用紙の適正使用の申し入れを行いました。18年度と21年度、だいたい3年おきにしてるんですが、今年度も明後日、2月18日に京都市京都府両方で、京都 府行政書士会に要請を行う予定です。京都人権啓発行政連絡協議会では、京都府警察との共催の形で、探偵業者や結婚紹介業者に対しても平成20年度から、毎年個人情報保護の徹底に関する研修を実施しています。今年度は、去る23日に弁護士や京都府警の方を講師にお招きして、研修会を実施してきました。この学習会には約30社が参加しています。

さらに、京都市の取り組みとして、課長級の職員を対象にプライム事件や千葉県船橋市の非常勤職員における個人情報の横領事件をテーマに個人情報の保護と人権尊重の精神を促す研修をしました。また、一般職員も対象に12月の人権 強化月間におきまして、個人情報の保護をテーマにした研修を行いました。また実際に、戸籍でありますとか住民票に携わる職員に昨年11月に開催された 京都府戸籍住民基本台帳事務協議会総会の記念講演といたしまして、同志社大学法科大学院の教授が「戸籍住民基本台帳事務とプライバシー」というテーマで研修を実施しました。こういった形で個人情報の保護やプライバシーの徹底に努めているところです。元来の京都市では戸籍謄本の請求にあたりまして、全国に先駆けて結婚相談所に提出するために独身証明書のような様式を独自に作成しました。アルバイトも含めた就職の際に、会社に提出する労働基準法第111条の証明は無料で出してるんですが、年齢の証明になります。本来法律では戸籍を出すことになっているんですが、本籍地等がわかるとよくないということもあって住民票記載事項証明で対応するなど、安易に本籍地を記載した戸籍を交付しないというような人権に配慮した取り組みも行っていました。

それでプライム事件の取り組みということでお話をしたいと思いますが。平成2311月に先ほど話にもありましたが、愛知県警が県警幹部の戸籍や住民票を不正に取得したとして偽造有印私文書行使、戸籍法違反の疑いでプライム 社に関連する司法書士ら5人を逮捕したという報道がありまして、当該司法書士につきましては平成248月に罰金250万円という刑が確定している。当該司法書士につきましては京都市78件の請求を行っていたことが判明しています。今回使用された職務上請求書は精巧に偽造されていたとともに請求 事由等にも特に疑わしいというものではなかったために、区役所では不審に思うことができずに残念ながら不正取得を防止することができなかったということでございます。ここで区役所での郵送による戸籍や住民票の事務手続きについて簡単にご紹介させていただきたいと思います。戸籍や住民票の請求というと、窓口で請求される様子を想像される方が多いと思われますけど、遠方の方にわざわざ窓口まで来ていただいて戸籍を請求するのは大変という事情もございますし、特に戸籍につきましては住所地と異なるところに本籍地を置かれている方も多数いらっしゃる、まあ実家のとこに置いといて遠くのところに住んでいる方も結構いらっしゃるということで、郵送による請求が認められているということです。請求書と手数料と返信用の封筒と本人確認の写しを添付していただければ請求することができるという風になっています。戸籍は450円、住民票は350円という手数料ですが、この手数料につきましては郵便局で定額小為替を買って同封していただくことで現金書留でなくても一般の封筒に入れてご請求いただくことができるという風になっています。

また、サラ金や金融業者、生命保険会社からも契約時と住所が変わってしまって行方が分からなくなった人の住民票を請求してくるというケースもよくあります。毎日、各区役所に何十件という形でこういった郵送による請求があります。これがだいたい一日のうち、11時くらいに郵便局から郵便物が届きましてそれを受付台帳に記載したり領収証を書いたり、等々しながらその日の夕方までに発送するという作業を、毎日どこの区役所でもやっているところでございます。また弁護士や司法書士、行政書士の方からも職務上請求用紙を使って毎日10通から20通くらいですかね、届いてきております。まあ今回の事件での京都市への請求はすべて郵送によって行われたということでございます。窓口での直接的なやり取りとは異なりまして、郵送の場合は請求書に不備があれば電話で問合せを行っているわけですけれども、なかなか請求者の電話番号が書いていなかったり、書いてあっても不在でつながらなかったりするケースも多くありまして、窓口で市民と直接的なやり取りは無いにしてもなかなか事務的にも大変な作業を毎日行っているところです。

 本題に戻らせていただきますが、先ほど説明させていただきましたように平成2210月に策定いたしました「住民票の写し等の不正取得に係る被取得者への通知実施要領」では、戸籍法および 住民基本台帳法の法令に違反し、判決が確定したことについて被取得者に通知することとしておりました。本来ならば直ちに被取得者に対し、通知すべきであるという風に思う所でございますが、それができなかったということがございます。なぜかといいますと、先ほど司法書士の罰金250万円の判決につきましては愛知県の事案の十数件に対してのみ起訴がされていたということで、京都市の案件について有罪が確定したと言えない状態になったということがあるからです。平成22年に策定した要領では判決が確定するということ、しているということが条件としていたということでございます。そのために京都市といたしましては、要領を策定した目的からこの事件に関しまして被取得者への通知が必要であるという風に考えまして、京都府とも連携し府内の市町村との調整もはかりながら京都市の個人情報審議会にはかった上で要領を改正して対応を行っていくという事といたしております。

要領の改正内容といたしましては第一に不正取得の定義のところで「住民基本台帳法および戸籍法の法令に違反し判決が確定したもの」というところがあったんですけども、そこにカッコ書きで「確定判決に 係る控訴事実には含まれないがその対応から同一事件として不正に取得された蓋然性が極めて高いと認められるものを含む」という文言を付け加えたところでございます。今回のように大量に不正取得された場合に立件されないということを想定されたら対応できるようにしたということでございます。第二に「不正取得者に対する住民票の写し等の返還の要請と通告を求める」と いたしまして不正に取得された蓋然性がきわめて高いと認められる場合には当該司法書士等に対しましては疎明資料を求めることといたします。このように完全に不正とは言い切れない多少ちょっとグレーな部分もあるということで一応取得者に対して疎明の機会を設けるという主旨でございます。第三番目に「蓋然性が極めて高いと認められる場合はどんな場合なのかという基準」も設けました。基準は2つありまして1つ目は法務局、都道府県、戸籍謄本等所職務上求書を使用する8士業の監督官庁又は各士業の所属会から職務上請求書が偽造等により不正に使用される恐れがあると明示された、職務上請求書の番号、先ほどの後ろのスクリーンにもあったと思いますけども、その職務上請求番号が一致している場合ですね。2つ目は「確定判決に 係る事案と本市における職務上請求書の使用時期が近接しており、職務上請求書の発行主体、監督官庁または法務局等への照会の結果、職務上請求書が偽造されたこと等により不正に使用され、または不正に使用された恐れがあるといった回答があった場合」ということにしております。今回は通知した事例に関して平成2311月に京都地方法務局戸籍課長名で「戸籍謄本等の職務上請求書偽造についての事務連絡」というのがございまして、偽造されたとされる職務上請求書の番号および司法書士の氏名が法務局などの事務連絡と一致していたためこの基準に適合しているということでございます。実際の事務の流れとしましては21日に「住民票の写し等不正取得に関わる取得者への実施要領の改正」を個人保護審議会に諮り同日付で要領改正をして24日に不正取得者に対して疎明資料の提出及び、取得した住民票の返還を求めるとともに、期限までに提出がない場合には被取得者に通知するという警告を行ったところです。フロー図をつけておりますけれども、新聞報道等で言われたことで不正の事実を京都市でも把握したところでございます。それから裁判所での罰金の決定というのが平成248月、控訴されているんですが、控訴棄却により82日に判決が確定ということがありました。それから要領の改訂作業などで時間がちょっと経ちまして21日付で要領改訂して、疎明資料の要請を24日付でしているところでございます。一応期限が212日までということで、期限を設けておりましたけれど 、それまでに回答がなかったということで、213日付で被取得者の方について、本人に通知したということです。

いくつか反応も出ています。驚いてお電話されてきた方などもあるわけですけど、今後の対応といたしましては、本人に面談をするということになっていまして、面談につきましては市民窓口課長や、人権文化推進課の課長級職員の方などに対応してもらうという形です。本人さんに通知するということになっているんですけども、通知した内容を、一応プライム事件の概要も含めまして「一万件不正に請求された中の一つがあなたの案件なんです」という事も入れたうえで通知を行っています。それから、実際に面談して説明することになるのは実際に請求した司法書士の個人名ですね。先ほども出ました佐藤というんですけど個人名を言うとか、いつ頃とられましたとか、戸籍謄本がとられたとか住民票がとられたとか、また、当該司法書士の刑罰が罰金250万円でしたよということ。本人に説明するときに一番不安に思っているのは、取られた戸籍や住民票が実際に何に使われているのかを、こちらとしても掴めないという事がございまして、実際に送った方の反応を見ましても、「何に使われたのか分からないのに知らせてくるのは単に不安を煽るだけではないのか」という事で本人さんからも苦情を言われたりというところがあります。そんな中で、心当たりがございませんかとか生活に変化はありませんかという事で本人さんに説明したうえで、 何か心当たりがあれば人権擁護機関とか、法律相談とかそういったところを紹介させていただくという対応をしていただくということになります。先行して実施された福知山や京丹後、宮津などの対応を聞いていますと、心当たりがないという方がほとんどでして、やっぱりそこで、何に使われているか不安であるという風な対応をされるというケースが多いというように思います。13日に私共も発送したところですが、すぐ説明に来いというような事で課長が走って行ったこともありましたし、やっぱり何に使われたか不安だというところが本当に一番大きいところだと思います。

すぐに電話がかかってくるというケースがあるようで、丁寧に説明して本人に寄り添った形で対応を行っていきたいなと思っています。先ほど神原さんからお話がありましたように、群馬ルートということ でプライム事件の4倍もするような事件の通知も後に控えておりますので、それについても誠心誠意行っていきたいというふうに思っているところでございます。それにつきましても判決が確定次第、通知を行っていきたいと考えています。

 

菱田:ありがとうございました。今からお話ししていただくのは舟木弁護士ですが、これだけ押さえておいてもらいたいんですけども、弁護士を代表してという立場ではございません。いろいろなつながりがある中で弁護士さんの本来業務として、普段の仕事で職務上請求用紙を使った仕事内容。もしよければ具体的な案件や、もし万が一資格がある人たちの中で不正などが発生したら、弁護士会として何らかの処分の用意があるのかという点もお伺いしたいなと思うんですけども、所属はつくし法律事務所でお仕事をされています。では、舟木弁護士よろしくお願いします。

 

舟木:みなさんこんにちは。今紹介をしていただいた通り、1週間前に生活保護引き下げの勉強会でしゃべっていたときに、終わってから、突如声をかけられて、ここに 来させてもらうことになったんですが、私の資料は全くなく、この分野の専門家でもなんでもなく、お話させていただくことを、先にお詫びしなければなりません。ですが、今私が聞いていた限り、このことに詳しい人でないと分らない話も色々と出ているんじゃないかと思うので、そもそも弁護士がどういう場面で請求書や戸籍を必要として、どういった風に使っているのかという事をお話ししたいと思います。私自身の私生活を考えても、あまり住民票を自分でとったり、戸籍を取り寄せたりという事はほとんどないのですが、皆さんもあまりないんじゃないですかね。連帯保証人になるとか結婚するとかだと必要ですが、あまりないんじゃないかと思います。ただ弁護士の仕事の中では他人様の住民票や戸籍などを手にする機会が頻繁にあります。そういう点では皆さんの知らないところでひょっとしたら私たち弁護士は皆さんの住民票や戸籍を仕事の中で取っているという事が発生しているのかもしれません。そういう意味では先ほどDVDの中で日常的に接していると重要性が分からなくなるとありましが、確かにそうかもしれないと、普段目にしている住民票とか戸籍とかいうものが当たり前になってしまっていて、流出させたりはしていませんけれども、その価値というものが麻痺してきていると言われたら、そうかもしれないなと思いながらDVDを見ていました。

たとえば皆さんが会社の同僚からどうしても金が要るんだと頼まれて100万円貸してあげた。でもやはり 借用書を作って住所、氏名書いてハンコも押してもらったとしますよね。でもその人が職場から居なくなってしまった。そしてお金が返ってきていないとなったら、皆さんどうしますか。どうやってお金を取り戻そうと思いますか。居場所が分かればもちろんいいですけども、その人が住んでいた場所に行ってもいないとなってしまって請求できないとなると困ると思うんですよね。踏み倒されても困るわけでそういった場面で具体的に弁護士が債権を回収してもらいたいとなった時にどうするかというと、やはり置かれている住民票をたどっていくという事を考えるんですね。実際には住民票が別のところに移ってしまっているかも知れないけれども、そこをたどって新しい住所を特定してそこに通知を出したりという事をします。もちろん被害者でご相談に来られる方は弁護士だったらなんでも追いかけられるという風に思われていると思いますが、住民票を移してないと弁護士でもそんなに住所の特定はできないんですけど、住民票をたどって相手方に通知を送ったり、裁判をおこすということをしております。なので相手がどこに行ったか分からないという事が結構あるわけですね。

精神障害をお持ちの方が、知らないうちに年金の手続きを、お世話してもらっていた元同僚がされていて、本人もよくわからずに、口座の通帳やカードが本人の手元に無いまま年金が世話してくれた人に行ってたようで、10年以上それが続いていて、大金だったんですが、その被害者の方はもう亡くなってしまっていてその方の奥さんがいまして、本人曰く前居たところに行ったけどもう居ない。また病院に入院しているという話も聞いたので、行ってみたけど個人情報だから入ってるかどうかも教えられないと言われて、年金に入っていたであろう経過もわからないし、自分の名義になっているであろう口座やカードも取り戻すことができない。このケースでも、相談をしに来た人が知っている住所からたどってどこにいるのかを把握した上で、文書をお送りしました。これは直近で使った住民票の例ですし、また戸籍 の最近使った例で言うと近隣関係です。簡単に説明すると、お隣の方の管理の仕方が悪くてうちの家の 擁壁にひびが入っているから何とか補修をさせたいという事があって、お隣の不動産登記を取ると、現在入っている人じゃなくて、その1つ前の世代の人になっているんですね。裁判の手続きの中で相手方をどうするかという事になると、やはり相続人を相手にしないと手続きを進められないわけですね。もう亡くなられている方が名義人になっているのですから、誰が相続してるのか、となると亡くなられている名義の方からたどって、実際に戸籍を取って、相続人が誰なのかということを特定させないと、相手方を確定できないということになるので、実際には、奥さんとかお子さんとかになるんでしょうけど、どこにいるのか、何人いるのかがさっぱりわからないというところからスタートして、それを住民票や戸籍をたどって特定させて相手方として特定することで、紛争解決が始まるんですけど、そもそも誰を相手にしなければならないかというところで、こっちからはよくわからない相手方の事情について弁護士の立場で変わって、相手方の戸籍や住民票を取り寄せて、手続きを進めていくということを行っています。これは我々が弁護士としてみなさんと全く異質の世界にいて、紛争でお金を頂いてそれを解決していくことを生業とする仕事なんですね。それがために、戸籍法や住民基本台帳法のなかで、弁護士は多分他の士業に比べてもかなり特殊な仕事だと思いますけど、本来であれば原則本人あるいは直系の親族などしか取れないものであっても、職務上請求用紙という形で皆さんが使う用紙とは別の用紙を使う中で、特に仕事で必要であると言うことを書いて取り寄せています。個人情報の観点から言うと、とられる側からすれば勝手に取られたら困るということでバランスが常にあって、それも時代と共に、変わってきていると思うんですけれども、どういうことまで記載して取れるようにするかという議論もあって、特に議論が出たのは、依頼者名を書くかどうかということでは日弁連が反対して、そこは書かなくても良いという形で今の運用がされているんですが、それは、特に議論になって、京都市ぐらい大きい都市だったらいいんですけれど、大きな街ではなくて、田舎になると役所にいる人間も顔の知れた人間で、自分が弁護士使って何かやってるということが、どういう風に思われるかわからないというような不安が、仮にあったとすると、そもそも弁護士さんに頼むということ自体、躊躇してしまうことがあるというようなことも弁護士会の方で指摘して、さすが依頼者名まで書いて、事件でこういうことがあってこういうことまでやってるというのが、町役場で顔のわかるような人たちも知ってしまうというハードルもなくして、弁護士が守秘義務を負って仕事をしている中で、なるべく本人さんの紛争が外に知られない形で仕事ができるということで、バランスをとりながら、どこまで個人情報を守りながら、片方で紛争解決のために弁護士の仕事を確保できるようにしていくかバランスが常に問題になっているということです。とは言いながらも弁護士は、勝手にとってもいけないので、日弁連としてはルール化をしそれを周知させるということもしていますし、仮にルール違反でおかしな扱いがあった場合は、依頼者のお金を横領したりとかするのと同じですよ。会内としては懲戒の手続き、懲戒委員会というものを京都の弁護士会でも組織していて、弁護士の品位をそこなうということであれば、弁護士に対して懲戒、軽ければ戒告、重ければ除名ということも含めて、どういった処分が適切なのか判断しています。とりあえず、特権のように思われてしまうかもしれませんが、対依頼者との関係で、案件処理する上では、さっきご紹介したように、どうしても戸籍や住民票をたどって仕事をしていく上で必要になっているということをご理解いただけたらと思っています。以上です。

 

菱田:はい、ありがとうございます。自己紹介がてら、それぞれの立場で、これまでの事実や関り、行政上の取り組み、弁護士の先生からは実際的な使用や必要性等お話をいただきました。ただ、話の中に出てくる単語も含めて、なじみの薄い業界の話になっているのですが、それぞれ三名の話を聞いていただいて、何か疑問に思うところ、ごく単純なことでもいいので、 何かあれば、どうでしょう。いかがでしょうか。

 

質問:所属は解放同盟山城地区井手支部のNと言います。最後の舟木弁護士の話を聞いていて、うちの娘が海事代理士で、ある知り合いの行政書士にお世話になってて、個人情報、住民票の請求をしたことがある。それは本人が依頼者との関係 がなくても、8士業であれば取れるという。そこには人権感覚がないという。勝手に本人が知らない間に取ることができる。それはおかしいのではないかと、言ったのですが。

 

菱田:まさにそうなんですね。業務上、法で定められた権利というか資格としてそういう権限をお持ちなので、一方では舟木先生がおっしゃったように当然な仕事で必要としている書類だと。しかし、その請求でウソをつかれると事件が発生することもある。私自身、さきほど申し上げたように窓口業務として区役所におりますが、請求者からいただいた内容が、さぁ、それがホンマかどうかというは、なかなか判断ができないといいますか。職務上請求用紙が届いて、書面が整っていれば、性善説をとるしかない。この業界の方はウソはつかへんやろと、いうことで、結果として偽造だったということが後でわかったとしても、判別して事前に水際でとめる手だてを見つけにくい。そういういろんな立場や、さらに人権感覚、そして役所の立場も考えるとどういうバランスを今後の対策としていくか、それを今日、見出したいんですが。

たとえば、今回ひとつ、訴訟に使うという左京の請求書があったんですが、開示請求した中で。弁護士であれば裁判のための準備作業のための書類が必要だと思うのですが、司法書士であれば、どんな理由ならば正当な理由だと認められるのか、ということを考えた時に、弁護士ほどの権限はおそらくないはずなんです。限られた範囲だと思うんですけど、請求理由と請求者の立場が一致してるか、これは一覧表としてまとまったものはありません。

私からも京都市への要望としては出そうかと思っていたんですが、区役所の職員、あるいは区役所に限らず、自治体の職員のスキルアップの手段として、この請求はこの理由なら正当な理由ですよと、ということの意志統一が必要だし、あるいは研修について、あいまいなままこなしていると、発覚するために気付く感覚が育たないということが、一方にあると思います。実際、開示された請求書ですが、「 脅迫言動による精神的被害に対する慰謝料の請求条項による」という理由により、「不法行為の即時中止を求める通告書の作成業務になります」ということが書いてありますが、さてこれが行政書士の仕事としてこういう理由は正当なものであるのか、なかなか整理しきれないのが現実としてあると思います。行政書士の仕事としてこういうのは本来業務としてあるものなのですか。

 

舟木:私が見てるのは東京の行政書士さんが、業務の種類としては、「慰謝料の請求業務」と書いてあって、具体的な権利行使、義務事項の中身ということで、さっきから読まれているような脅迫、恫喝とかという話が書いてあるのですが、そもそも業務の種類で慰謝料を請求措置業務という段階で行政書士がやるわけがない。行政書士というのは対行政にする文書の作成を仕事にしておられるわけで、委任の損害賠償請求とかで開示をすることないわけで、後の 細かい文章読まなくても、なぜ慰謝料で行政書士が口出すんだろうと、私は疑問をもって当然じゃないかとむしろ思うんですが、ただ役所がそこですらもチェックが働かなくなっているということで、それだけお忙しいし、やっぱり士業がそれぞれどういうことをやっているかということもわかっておられないというのであれば、さっきから出ている研修も必要だろうなと思いながら聞いていました。

ただ、これが司法書士になった場合は若干微妙で、簡裁代理権をもっておられる司法書士さんは今はおられて、簡易裁判所に請求をおこすということで代理人として権限をもって法廷に出ていける司法書士さんというのもけっこうおられますので、そこは疑問があればお伺いをするなり、ちょっと名簿はどうなってるかわからないけれど、 簡裁代理権をもっている司法書士さんかどうかの照合をチェックする等の方法があるのかもしれません。ただ、この行政書士さんのこういう業務に関しては、一見しておかしいんじゃないか確認する必要があった。行政書士さんに、これどういうことかなと聞いてしかるべきじゃなかったのかと私は思います。ただ、現場はどういう仕事を抱えていて、どれくらいたいへんなことかわからずに発言しているので、そのへんの苦労は現場の方から教えて頂きたいと思います。

 

岡安:京都市では平成20年に法改正があった時に、わりと事細かく請求用紙のことについても「用紙はこんなんですよ」と決められて、行政書士はこういう業務、司法書士はこういう業務というような通知を私どものほうから区役所へしたことがあります。一般的に窓口に 来られるので多いのは、司法書士さんは登記の関係業務が多いなと思いますし、行政書士さんは役所に出される文章を本人にかわって、本人の依頼にもとづいてされるということで、まぁそれがメインな業務かなと、中には外国籍の方が帰化されるとか、そういった書類を持ってこられるケースが多いと思います。

ただ、今回の慰謝料請求というのは、あまりこういう文章は見ることがないですね。少ないと思うので一応は疑問に思うとは思うのですけど、なかなか職務上請求用紙を処理する中で実際に聞いてみるということまではできていないと思います。ただこれも実際の請求理由を見て、慰謝料の請求といっても内容証明郵便で送るとすれば、行政書士の業務といえなくもないのかなというのも、思うところでありまして、最近、行政書士会の方に聞いたりするんですが、なかなか理由ではねられたりすることも多くなってきたということも聞いてますんで、一定、 市民窓口課の職員も勉強してやっているとは思うんですが、ただ全体通して、きっちり確認するということまでは、まだできてないのかもしれませんし、そのへんは研修していく必要があると思います。

さきほど私の話の中でもふれましたけれど、郵便でくる分の職務上請求というのは、私もかつて伏見区役所のほうで業務に携わっていたのですが、10通か20通くらいありますね。その他に窓口に来られるケースがやっぱり110人以上こられます。ということで流れ作業でやってるわけですけど、その中で市民の方の戸籍謄本の請求であったりとか、職務上請求で最も多いのは相続の関係で調べることが多いんですが、そもそも遡っていきますと、中にはけっこう時間のかかるものもあります。京都市は戸籍簿をまだ電算化できてなくって、今年からようやく着手はじめたところですが、戸籍の筆頭者の見出しで調べてやっていくということで、それも出生からすべて戸籍をくださいといわれるケースがけっこうありまして、そうなると30分くらいかかって探したりとか、そう いう状況がありまして、それでも前の本籍地から一個ずつたどっていかないとわからないということがあって、時間がかかるということで苦労してるという状態です。

 

神原:先ほど、請求することと人権の問題との意見がありましたけれど、先ほど言いました10年前の結婚差別事件で司法書士が戸籍謄本等を4つの区役所から不正請求して、結果、結婚差別が引き起こされた件なんですけど、司法書士がこんなことをしていていいのかということで、京都の司法書士会と話し合いを幾度となく持ちました。その時、いちばん最初の反応は、それは本人が悪いんや、司法書士会は 何の関係もありませんと、悪いことやって処罰されるのはわかっていてやってるのだからこれは本人の問題ですというのが、最初の司法書士会の対応でした。そうではないと、粘り強く話し合いを続けまして、一方で、不正なことをすれば弁護士さんの場合は弁護士会で処分しますけれど、司法書士と土地家屋調査士の処分権があるのは法務局長で、行政書士の場合は知事ということになっていまして、 今回不正請求をしたのは司法書士ですから法務局長の職務権限があるわけです。法務局との交渉も行いました。で、法務局は司法書士会に丸投げのようなところがあります。これは行政職員は20年やれば行政書士の資格を取れる。法務局の職員を20年やれば司法書士になれる。税務署の職員の場合なら税理士になれる。大学の法学部の教員なら弁護士や裁判官になれ るということがあります。試験を受けなくても。で司法書士会に対して法務局は甘いところもありましたけれど、他方で、 行連(京都人権啓発行政連絡協議会)の方の取り組みとして、企業対象にちゃんと研修しなさいと、公正採用選考の推進をしなさいと指導をしている、企業に対して人権研修を求めながら、自分のところの監督権が及ぶ司法書士会に対して一回でもそういう研修をしたのかと聞くと、法務局はつまってしまって、それから1週間後くらいにあわてて司法書士会に研修に行ったようですけど、そういうこともありました。時間はかかりましたけれども今京都の司法書士会では、毎年研修を行ったり、京都市が行っている人権ワークショップに司法書士会から参加したり、徐々にではありますが変わって来ています。行政書士会の方も、このままでは行政書士の存在意義が問われると、司法書士に任せたらいいということになれば、行政書士はなくなってしまうかもわからないという危機感の中で、それなりの研修強化を今はしています。まだまだ不十分な点もありますけど、かつてに比べるとちょっとずつですが前進しているところもあります。

 

菱田:ありがとうございます。Nさんからの話にふれて、発言していただきましたが、つながりの話でもかまいませんし、いかがでしょうか。

 どの立場もさぼっているわけではないと思うんです。どうしてもこういう不正取得の案件というのは、取られたことが不正に使われた結果、事件として明るみに出るわけで、事前に抑止するのが非常にむずかしい。普通の請求に対して住民票、戸籍を交付して、それが結果としてどう使われていくのか。請求自体は一見正当だけれど、取得されたものがどう使われているかは、なかなか追いきれない。結果として事件にならないと、わからない。そこで、私も部落解放同盟という立場の中で、京都府、あるいは京都市、法務局との交渉に参加する中で要望として、特に行政への要望として「事前登録型本人通知制度」を導入してくださいという要望を出しているんですけど、このあたり具体的に事務局として要求書を書いてもらってるところですが、神原さんいかがですか。その事前登録型の本人通知制度の意義・役割 、メリット、デメリットもあると思いますが、そのへんを話していただけたらと思うんですが。

 

神原:役所の窓口の方にとっては戸籍謄本等の請求があれば、取られましたという通知をしなければならないのは、かなりの負担増には、短期的にはなるかとは思います。で、しんどいなと思われる役所の方もおられるかもしれませんが、不正請求では一定の抑止力になります。実際に、登録型本人通知制度を導入している市町村から行政書士名で戸籍謄本の不正取得が本人に通知されたことによってそれが発覚して関係者が逮捕されるという事件が7月に判明してます。戸籍の不正取得関係のニュースを チェックしていて、鹿児島で逮捕者が出たな、行政書士が書類送検されたな、というのは把握していたんですが、それが本人通知制度によるものだと知ったのは秋になってからのことでした 。埼玉県の桶川市の市民の戸籍謄本が鹿児島の行政書士によって取られていた。不正取得に関係した行政書士は4人いたわけです。仲介した東京と鹿児島の男二人が逮捕されて、四人の鹿児島の行政書士につ いては書類送検ということで名前は出ませんでした。いろいろ特定できれば、京都でも不正請求されてないかと、開示請求で真相を明らかにできないかなと、いろいろさぐったんですが、薩摩川内市というところの行政書士、67歳の行政書士というところまではマスコミ報道されています。それなら行政書士名簿でチェックし ようと思いまして、調べましたら、なんと36人も出てきたので特定はできませんでした。役所のOBがとりあえず登録しとけということで行政書士に登録している方も多いと思います。鹿児市の三人については皆目わかりませんでした。で、解放同盟の鹿児島県連が鹿児島の行政書士会に名前を明らかにしろと要求したのですが、まだ明らかにしていません。今のところ、それ以上のことはわかっていません。逮捕された二人の男も二週間で略式起訴だと思われます。罰金刑が確定していますから、正式裁判が開かれないために真相は藪の中といいますか、全くこの鹿児島の案件についてはわかっておりません。ただ、事前登録型本人通知によってこの不正は暴かれたという事、それと群馬ルートとの関係で言いますと、大沼という元行政書士の探偵社、あるいはベル リサーチの関係者が、事前登録型本人通知制度を採用している市町村については引き受けない。バレてしまうから引き受けないと、こう言っていたというのが公判で明らかになっております。したがって不正請求への一定の抑止力はあるというふうに思ってます。で、京都の場合でしたら101日に福知山市、1015日に京丹後市がスタートしてます。解放同盟としては年度内に各市町村、導入してほしいと。すでに埼玉県、香川県では全市町村導入していますし、本年度中に山口県も全市町村が導入するという予定になっています。で、京都市についても早く導入していただきたいと京都市協としても要望を続けております。

 で、戸籍謄本等の不正請求ですけれど、今インターネットの中で、どこそこが部落だという書き込みがいっぱいあります。部落を排除する以上は、とりあえず部落かどうかの判定なんですけど、ここが部落やと思ったところが勝手にどんどん広がっていますから、ネットの中の部落は膨大なものになってます。他方で調べたい 者の垣根が非常に低くなっているというか、今までは一定の、「これは聞いたらヤバいやろ」という一定の抑止力があったのが、だんだんなくなってきまして、役所に堂々と電話かけてどこ が部落か聞いてくる。あるいは、解放同盟に直接どこが部落か聞いてくる。去年もありました。対応しました。今年もありました。これも対応しました。去年の秋のは、むこうが逆ギレして、たまたま相手の電話番号がナンバーディスプレーによってわかりまして、それで大阪の八尾市だったために、大阪府連を通じて、八尾市のほうが、そのかけた人に電話をしたようですけど、そこでも「しつこい」とか、「あやまったらエエんやろ」とかいう調子で、反省が全くなかったということですけど、そういうふうに部落の問い合わせが激増していまして、さらに調べたい者は探偵業者に連絡すると、こういう構造になっています。これから先もさらに部落の問い合わせは増えるでしょうし、行政ヘの調べてほしいという要求もどんどん出てくると思います。そういう中で、これ以上戸籍の不正取得 を許さないためには、完璧ではありませんが事前登録型本人通知制度の導入、これは大きな武器になると思います。ただし公務をかたった請求、かつて大阪の生野署の幹部が身元調査のために頼まれて、捜査関係の照会書類で戸籍謄本をとって身元調査に利用されたという、結婚調査に利用された。たまたまこれはわかった事 でありますけれど、残念ながら、公務請求については、公務員は悪いことしないだろうとか、あるいは別の法律で、公務員法違反で逮捕されることがあって、一応、事前登録型本人通知制度の ところからは、公務請求は除外されたかたちになっています。

 

菱田:そもそも事前登録型本人通知制度についてごく簡単に言いますと、僕の本籍地は京都市南区なんですけれど、京都市南区役所に僕の戸籍謄本が第三者から請求があって、交付したならば教えてねというのを、あらかじめ登録しとくんですね。そしたら船木弁護士から戸籍請求がありましたよと、交付しましたよと連絡があるんです。一方で、何にも頼んでないということで、じゃどうのというのが発覚していくわけですけど、そういった意味で事前に登録しておけば請求があれば教えてくれる制度ということになるんですけど、ならば一定の抑止力、それも出してから弁護士に出してから交付しましたよということなんで、若干、時間的には短くなりましたれど事後には変わりないんです。でもそういう制度を導入することで、不正。まじめに仕事していこうという人には別に言われたっていいよと言うと思うんですけど、ただそこは船木弁護士に言わすと、密行性といいましてね。弁護士さんの受任事件ですね。依頼者による事柄によっては、他の人に知られたらいけない情報も、依頼者から、依頼としてあるということです。それと京都府、京都市で連絡会を開いて頂いて、事前登録型本人通知制度を導入していこうという議論の中で、やはりその密行性ですね。業種の本来業務の中で守るべき情報もあるんじゃないかと、なんでもかんでも登録している人に教えていいのという議論が一番のネックになっているようですので、議論の中身ですね。検討してもらっているという前提で、ここまでの議論はシンドイなということは岡安課長の方から議論状況について、ちょっと、お話いただけたらと思います。

 

岡安:この間、京都府を通じまして、京都府の市町村の人権担当の課長さんと事務業務それから戸籍担当の課長さんを集めて住民基本台帳に係る市町村連絡会議というのを、年に2,3回開催して、事前登録型本人通知制度についても検討しているところでございます。

一番には法律で正当な業務として認められている職務上請求書を利用した弁護士さんの業務について、市町村の方から単独で要綱等をつくって制限を加えることが、果たしていいのかというのもありますが、各市町村独自で制度をつくると業界のほうでも混乱が生じる可能性がある。今実施されている市町村でもちょっとずつ制度が違ったりして密行性に配慮されているところや、ぜんぜん大阪なんかは配慮せずに一律通知するという制度をされてますし、微妙に制度が違って、ここの市町村は、どんな請求されているとかいちいち例えばHPで調べたりとかいうことで、仕事のほうも大変だということもございます。そういう意味で一律的に法律で、制度を共有してもらうと一番ありがたいなと思っているところでございます。

戸籍・住民基本台帳につきましては全国的組織をつくりまして全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会というのがあるんですけど、そこでも年一回秋に総会を開いてまして、そういうところでも国に対して法改正の要望について議論しているところです。今年もやっていこうと、20年以降、毎年要望しているところですが、国のほうは一昨年くらいまで法律改正、罰則強化して、それから事件が起きてないので今のところ考えていませんということをおっしゃっていたんですが、さすがに昨年はあの事件も発覚したという状況もあったんでけど、さまざまな考え方もあるので今すぐ法制化ということは考えてないという発言があったということでございます。もう一点、一番大きな問題だと考えているのは先ほどまで出てました法制に関する反対でありまして、いちばんわかりやすい例として相続の話がでていましたが、相続というのは兄弟間でトラブルになるケースがあると思うんですが、片一方が親に遺言を書かそうとした時に弟さんとかが利益が相反する部分があるというので、そこで兄貴が遺言状を有利なように書かそうとしているということが、弟さんに知られると、弟さんがそういうことについて妨害をすることもありえる。そういうことが理由としてわかりやすい例かなと思うのですけど、弁護士さんが相続の業務、司法書士もやったりしているのですが、そういう業務をされるにあたって、相手さんに知られないように業務をしたいというのもあると思いますし、もちろんそれが役所に通知されることによって、弟に知れることになるということで、そもそも弁護士さん が頼まれにくくなるという事情もあろうかと思います。はたしてそういう密行性を阻害することがいいことであるのかどうかと京都府のほうと検討試案とかも出しているのですが、一定密行性に配慮した、本人に通知するタイミングを遅らせて通知してはどうかとか、通知をしないと いう取り扱いで、一定確かにこれは本当に業務ですよという疎明資料を出させることによって通知しないというような選択肢もあるのではないかという提案もされているところでございます。そういうことも慎重に検討してから導入についても京都市としても検討したいというふうに思っているところでございます。

 

菱田:これも現実のお仕事の中で、やっぱり船木先生。秘密裏にしておかなければならないというのは、やむを得ない話なんでしょうか。実際お仕事の中で秘密裏にしておかなければならないというのはあるよということは、言い切れるんでしょうかね。どうですかね。

 

舟木:さっき言いだしていた隣の方のはね。亡くなられたお父さんの名義になっていて、そのお子さんを探さなければならないというのは、別にそれが向こうに伝わってもかまわないかと思うんですけど、さっきちょっと出ていた例、相続の話は親族間で特にややこしい人がいて、なんとか自分で財産相続しようというので、お父さんにまず先に遺言書を書かせた上で、自分が事前登録をしておくんですね。で仮に他の方なりご本人、お父さんが亡くなる相続遺言書を残しておきたい。あらためて弁護士へ相談に行って、それを弁護士さんが仕事しようとすれば出来るとか、いろいろ考えながら、遺言書作成どういう風に作ったらいいかいろいろ考えるでしょうから、登記を入手したとなったときに、それが、ややこしい人に知れたときに、妨害がはいってくるのは、目に見えているので、そういうふうにプライバシーを守りたいと思っているこの事前登録を使うとならないという人も必ず出てくるだろうし、そういう人こそこういう制度を使ってなんとか自分の利益をというふうになることはありえるだろうと思います。

それから、さっきお金の回収で考えた場合、判決にのっとって、300万円支払いなさいよという判決で命じられて、で、それを払わずにすぐ相手が亡くなっちゃつたとしますね。なんとかこっちは財産を押さえたい、なんとか回収をしたいという状況の中で居場所がわからない。住所を仮に追いかけてどこのだれかと分かって裁判所に書類を出すという段階で、まず弁護士が動いているとなったら、差し押さえですから、今まで分かってる金融機関があって、銀行口座なんかをおさようと思っても、財産を隠すために他の口座に移したりということもあって差し押さえられないということも出てくるんだろうな。それをいいと見るのか、悪いと見るのか難しいですよね。個人情報の保護が最優先するのだと、世の中が判断すれば、仮に損をする人が出てもリスクを負ってでもやはり、事前登録にして開示すべきだろうという考え方ももちろんあると思うので、弁護士会は、実際は役所の方が困ってるらしいのですが、920日の 常議委員会、(総会に次ぐ)最高 意思決定機関ですが、ここで本人通知制度については反対であるということを決めて京都府下の全市町村にその文書を送っているということで、その中身についてはホームページに出ているということです。

弁護士会としては、さっきおっしゃったように弁護士に頼むことをやめます、ということになれば、業務としてもそうだし、守りたい利益が守れなくなるということで反対しているということで、まあ私は会を代表する立場ではなく、実際その細かい議論を知らないのですが、普段やっている業務がやりにくくなるなあということはまちがいのないことで、それで失われる利益が必ず出るというような。それを上回る利益がプライバシーなり事前登録型本人通知制度であるというならば、世の中が判断することもあるでしょう。失われる利益もちゃんとわかった上で選択するべきで、わからずに一方だけ見て決めてしまうのはないようにしてほしいなあということで、こういう場で違う立場からいろいろ言って、みなさんが何を優先すべきなのかを考えて選択をされるというのであれば、やむを得ない。それは民主主義だと思います。一方だけを見て、本人通知が絶対に必要だということではなく、片方で何がリスクとなるかを弁護士の立場から言わせてもらいました。

 

菱田:ありがとうございます。まあ解放同盟の立場からやったら、導入せい、導入せいって言えばいいんですけど、岡安課長はちょっと待ってと。それを同じことを僕自身のなかでもやっているんですよ。前にも言いましたように解放同盟の役員という立場と、言ったら言っただけかえってくる市窓口職員という立場がございまして非常に悩ましいことは悩ましいんですけど、今密行性とか、導入の議論の難しさというのをおっしゃっていただいたと思うんですけど、では不正取得の抑止の方法があるのかどうか、ご意見どうでしょうか。1つだけ神原さんの方からもあったんですけど桶川市の案件につきまして事前登録してた方にパスポート偽造だと思われる案件が当たったということも実際ありますので、バランスの問題なんですけど。神原さんとしては、今後解放同盟としてどういった要望をつめていきましょうか。

 

神原:要望と言われましても、まだ途上と言いますか。事前登録型は大阪型と埼玉型がありまして、埼玉の場合は住民票の本籍地記載のないものは除いています。本籍地記載のある住民票と戸籍が対象。大阪の場合は全てが対象。先ほどもありましたが密行性の問題もありますけど、全部通知してしまえということで、ただ大阪の市町村で実施しているわけです。埼玉、香川も全市町村で実施、山口が3月いっぱいまでに全市町村。ただし戸籍限定と聞いております。昨年の10月段階で全国で200を超える市町村が事前登録型を導入しております。被害通知制度を全市町村で導入しているのは京都だけですけど、ただ京都市からも説明がありましたように、要領改正が十分できていない課題はあります。プライム事件で通知した市町村は全国的にはかなりの数に上っています 。部落解放同盟としては、根本的には、こんな戸籍制度は廃止してしまえというのが本来的な主張ですけど、とりあえず、あることを前提としながら1つは法改正。前の法改正の時に事前登録型についてもパブコメ募集の時に、様々なところから導入をというコメントが結構行ってます。ただそれは採用されませんでした。ただ法務官僚は法務官僚で、そのときに法務省から出ていたのが、自分たちの利益を守るために 細工するというか戸籍が証明手段として重要なものであると、その時法務省から出たのが重婚防止のために戸籍謄本を証明手段とすることは必要なことだと。実際には法務省とかつての自治省、今総務省です。これから、かつての通産省、今経産省になってますけど、3者合意で結婚相談所の差別事件の時に行政証明としての独身証明制度を導入すべきという見解を出して、全国の都道府県。政令市、中核市に通知を出した経過があるにも関わらず、そのことには触れない経過があります。全国の戸住協からも本人通知制度導入の要望も法務省に対してあり、運動としては法改正をキチッと目指そうとしていますし、この27日の日には京都地方法務局との交渉も予定しています。従来から法務局の見解は、戸籍謄本の発行を止めるのであれば違法になってしまうけれど、発行は正規のルートでちゃんと発行をした上で、後の行政サービスとして事前登録した人に通知するのは、これは、規定はないけど、支障がないというものです。これは本省との協議の上での法務局の見解ですし、市町村については法務局がこういっているというのは、私たちとしても伝えています。ただ市町村にしたら直接法務局の方から事前登録型本人通知はオッケーですよと言ってほしい、お墨付きがほしいという立場はなんですが。でないと訴訟になり弁護士から裁判おこされたらどうしようという心理も市町村にはあります。ただ法務局は今言ったような対応です。運動としても法改正は求めながら、自治体は住民の人権を守る立場で管理責任などがあります。だから事前登録型本人通知制度を、様々な運用面の問題はあるでしょうし、密行性の問題で言うと、京都府の試案にあるように戸籍謄本を発行したらすぐに通知をするのではなく1、2か月置いてから、後で通知をする、そういうやり方もこれはこれで考えていただいたら結構だと思います。ただ、全市町村が足並みをそろえてほしい。そうすれば例えば探偵業者が全市町村で実施をしているから、京都府内に居住している人の戸籍や住民票を取るのはまずいから止めようと、不正請求の確実な抑止力になるのではないか。もちろん個別の不正請求すべてが封じ込められることでは無いのだけれど、かなりの抑止力になるのではないかと思っております。

 

菱田:神原さんの今の話では、法務局は自治体任せ、市町村任せの判断になってしまうという事で、それを振られた府、京都市にしてみたら、これまで3人で話している中では矛盾ばかりが結果的にはあって、決まらないんですよね。だから戸住協という組織からの要望という事で法務省、法務大臣に対して要望していくという事だと思うのですけれども。今のところはそれしかしょうがない事なのかもしれないです。ただ、DVDにもあった、闇のネットワークですか、個人情報が流出されていると。個人情報保護法により守られる事によって余計値打ちが上がっているという相反するところで、そんなに人の情報が知りたいのかというのがあるのですけれども。皆さんはあの人の個人情報を知りたいとか思われるのかな?…ごくごく、単純に思ってしまうんですけど。特に理由でいうと“結婚相談”、“就職”の下調べということですかね?というのもなかなか、それぞれの立場でポイント、ポイントはこういう制度がありますよ、こういう問題がありますよ、という事を言えたとしても、はじめのDVDの方で仕組みが書いてありましたよね。でも、そもそもの依頼者の中では、わからないままなんですよね。いくら1万件、2万件の請求が全国であったと、で役所に情報開示請求して、行政書士の誰々が取りましたよと、じゃあそれが、どうして?それが誰にわたったの?そもそも誰が何を調べたかったの?という事を調査会社に依頼をして関連のある色々な方々を使った調査会社がじゃあ、そもそもの依頼者にどうフィードバックしたのかといえば、そこまで見えない。ということはそもそも、なぜその情報を知りたかったのかという事は全然結果として見えない、ということが言えると思うのですが、三者の立場で喋ると結論は出ません。もちろん今日出るわけもなく、今後の継続した話し合いも、もちろん解放同盟と各士業さんとも喋らないといけないし、行政とも喋らないといけないし、行政は行政で啓発も含め業者さんには接触していただけると思うんですけども、トライアングルで進めるのですが、今のところもうこれしか仕方がないと。ただただ、一方でまだまだ不正取得が起こっているというのが現実だという事をご理解いただきたいなと思います。参加者の皆さんには、感想なりご自分の思う所を発言していただければと思います。では、岡安課長からお話をどうぞ。

岡安:被取得者に対する本人通知をしているところですけども、なかなか不安に思われていて、自分の戸籍がとられたという事で。京都市としてはまだ他機関を紹介してあげるぐらいしかやりようがないという状況の中でですね、舟木先生にお尋ねしたいんですけども、自分の戸籍がとられたという事で、当該司法書士等に対して損害賠償請求などはできるものなのか。また、どれくらいの請求ができるのかという、「行列のできる法律相談」みたいな質問ですけどもお聞かせいただけたらと思います。

舟木:不正に司法書士が取ったということですよね。ん〜何に使ったのかにもよりますが、請求するとなればもちろんプライバシーの侵害という事で慰謝料の請求になると思うんですけども、もっと不正に悪用されたりすれば一律ではないんですけども、感覚的には情報を拡散していないので70万くらいじゃないでしょうかね。100万いかないような感覚ですけども。ただ僕的な見解なので、他の弁護士なら違う意見が出るかもしれません。

神原:事前登録型はまだ京都市では導入されてませんけども、被害者は取られても分らない。それでは、ここにいる皆さんは自分の情報を守る、あるいは取られていることを知るためにどうすればいいか。事前登録型の制度がなくてもできるのは、自分の情報が戸籍謄本や住民票を取られていないか、役所には3年以上、3年間は記録保存しなさい、請求用紙を保存しなさいと、3年以上経てば倉庫がいっぱいになって排除されますけれども、過去3年分の開示請求ができます。そうすることによって、いつの間にか不正に取られていた、自分で知ることはできます。役所から通知されなくても、こういう開示の制度は京都市がもってます。僕自身一回やったことがあります。不審な訪問がありまして、なんかおかしいなと。そうすると住民票が閲覧されていました。一応公的な調査という名目でしたけども、そういうことがありました。ただ、はっきり言ってこれを皆がやると役所がパンクします。菱田さん窓口でやってますけど、過去三年分の請求用紙、司法書士であろうが弁護士であろうが行政書士であろうが、全部三年分みんなめくってしまうと、窓口要員は完全にパンクします。ただ、権利として請求することはできます。ただみんながそれぐらいやらないと、なかなか法改正はできないのかなあと思いますけれど、自分の周囲で家族のことで何かおかしいなあと思うこと、例えば、子どもが生まれて、ベビー用品の「これどうですか?」が来たり、小学校入学のときに塾の案内や他の案内が来たりとか、なんで届くんやと不思議に思ったことはいっぱいあると思います。誰が調べたんやと。誰が流してるんやと。それを知る一つの手がかりは、自分の情報を自分で守るため、自己情 コントロール権と言いますけど、役所に開示請求をしてみる。こういう方法もあります。

 

菱田:岡安課長、住民票の閲覧って、ごくちょっと前までは結構自由で、緩かったんですよね。

 

岡安:五年ぐらい前になるんですけども、住民票閲覧制度の法改正が行われまして、それまではダイレクトメールの業者さんとかでも、住民票閲覧はできたんです。で、結構来られてました。それが法律が改正されて、まあ学術目的であるとか、世論調査であるとか、一定のそういう目的をもったもののみ、事前に審査したうえで許可されるという制度改正が行われてます。以前ダイレクトメールの業者さんなどが来られた時は、毎週のように閲覧に来られてたんですけど、やっぱり学術調査となるとなかなかそんなに件数もございませんので、月に何回かという形で閲覧の請求をしてくるということになっています。

 

菱田:まあ神原さんの方からあったんですけども、戸籍も住民票も元は公開してよかったんですけど、色んな問題点が発覚し、事件がおこり、もちろんもしかして解放同盟の取り組みも役立ったのかもわからないですけども、確実に厳しくはなってるんですよね。だけども、まだまだその時代、時代に合わせて不正請求は止まないということが一方であるんですけども、まあなかなか今日の分科会のなかで、結論は先ほども言ったように、出ないとは思います。それぞれの立場の、それぞれのことを聞きながら、矛盾のあるということは確かに感じていただくことはできたと思いますけども、えー会場の方や参加者の中から、もう他になければ分科会の締めに入っていきたいなと思ってるんですけど。

今言いましたように前のメンバーがしゃべった話というのは、DVD見てもらった中でも、闇のネットワークの中でも、ごくごく一部。もっと大きい意味でいうと、人権ということで考えた時は、その中の個人情報であり、政府や不正請求に 対する対策のもっともっとごく一部の話しかできてないですよね。で、先ほども少し言いましたように、じゃあそもそも部落差別があるからっていうところが、なかなか結論として達せないといいますか・・・。一方で、戸籍・本籍地がわかったところでどこが部落なん?ていうのはこれまでもずっと解放同盟として言ってきてることですが、地名 総鑑がある。あそこからわかるんでしょということにも繋がっていくし。やっぱりそもそもの依頼者が本当はどういう目的で利用してるのかまで把握しようがない。それで啓発ということで、我々も行政に要望したりするんですが、でもほとんど、「人の個人情報を調べたらあきませんよ」、「依頼したらダメですよ」「やめましょうね」というトーンというのは、概念からするとそれでいいのかもしれませんけど、どこか他人ごとっぽくて「私は別にあの人の情報を取ったことないし 、えっか」と思うような、他人ごとっぽくなってることがよくあるのかなと思います。例えば、「振り込み詐欺をやめましょう」とは言わないじゃないですか。やろうとしている人に「やったらダメ」という言い方はしないじゃないですか。「振込詐欺にご注意」と。「あなたが被害者になるかもしれないから気をつけなさいよ」というトーンでは言うと思うんですけど、これ個人情報の話も同じだと思うんです。それで今日の大きなタイトルを「狙われてます あなたの個人情報が」というタイトルにさせてもらったんです。ある意味結論のでない議論を重ねたんですけども、今起こっている現実を十分にわかっていただくというのが、今日一番お伝えしたかったところなんです。もちろん部落解放同盟は部落解放同盟の立場で、行政は行政の立場で、弁護士 会はじめ、それぞれの業界は業界の中で、十分に個人情報の保護についての取り組みを進めていただいてます。悲しいかな、一部に、お金ほしさに悪いことをするという現実なんですけども、それぞれの立場でそれぞれの運動を進めているんですけど、国民、府民・市民の皆様に思ってほしいのは、何度も言いますけれども、もっともっと自分の個人情報 を大切に感じてほしいなあと思ってます。で、自分の個人情報なり、まあもっと言えば人権なりの大切さを知ってくださいと。そうすればきっと、周りの方の人権の大切さ、個人情報の大切さ、「あの人の情報取ってやろう」とは思わないようになると思うんです。自分の大切さを知って、他の人の大切さを知ると。で、きっとそれができてくると、色んな気付きっていうか、見えるものが出てくると思うんですけども、そういったことが、無理やりですけれども、大きな今日の分科会のテーマ「人権・まちづくり」に繋がってくのではないかと思っています。で、弁護士の先生を呼ぶ時は、もうバッシングになるんじゃないかということも少し心配されてましたけども 、そうじゃないです。行政の方も岡安課長にも来ていただいたんですけども、「行政何してるんだ」とか、そういう素振りもありませんでしたので、それぞれの立場でそれぞれの今やっていることを、十分お話いただいて、まあ結論が出なければ出なくていいということを、事前に思っていましたんで、今非常に言いたいのは、自分のことを大事にしましょう。そうすれば周りのことも大事に思えてくるんじゃないですかということを提案させていただいて、第1分科会を終わらせていただきますけどよろしいでしょうか。よろしければ、これで終わっていきます。最後に司会の方から締めのご挨拶を一言二言いただいて、私の任務は終わらせていただきたいなと思っております。ありがとうございました。

 

宮崎:ありがとうございました。大変貴重な内容で、ちょっと難しさもあったとは思いますけれど、自分の情報はしっかり守るために、最後に出ていた、事前登録型本人通知制度というのを勉強してもらって、自分の身は自分で 守っていく、そんなことを今日は考えていただけたらありがたいと思います。それからこの分科会が始まる前にみなさんにお願いしました。みなさまからは本当に心温まる金額をいただきまして、一応ここで金額を公表させていただきたいと思います。総額が、¥17,133。これにつきましては、本人が21日までに納めるということなので、その弁護に取り組んでおられます、来ていただきました舟木弁護士を通じて、本人にお渡ししていただくということで、みなさんにご了解と報告をさせていただきます。それで今日の分科会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

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