みやこめっせ大会議室
司会:松川洋祐・原田琢也
記録:金谷直樹・山口基之
1:30~ 分科会の流れ、討議の柱、パネリスト紹介
1:40~ パネリスト 姜(カン) 竜(ヨン)平(ピョン)さん(在日韓国青年同盟 大学生)
「在日であることをアイデンティティーの預けどころとして~様々な出会いから~」
2:13~ パネリスト 土岐文行さん(嘉楽中学校)
「外国につながる児童・生徒の「つながり」のために ~「つながる会」の活動を通して~」
3:05~ パネリスト 浜田麻理さん(京都教育大学)
「国際理解教育と新渡日児童・生徒の現在と課題」
3:40~ 討議
討議の柱と分科会でこれまで話し合ってきたこと
・一人ひとりの違いを認め合い、全ての子どもの人権が保障され、自尊感情が持て、アイデンティティ確立に向けて支援できる学校づくりをめざして
・在日韓国・朝鮮人児童・生徒が民族性を自然に発揮できるクラス・学校とは
・新渡日の児童・生徒に対する教育保障の内容について
・同和教育の継承・発展の在り方と実践について
Ⅰ姜(カン) 竜(ヨン)平(ピョン)さん報告内容要旨
自らの生い立ちを振り返る中で、民族名で生活し始めた経緯や、「在日」というアイデンティティを再構築していった過程など話されました。
・物心ついたときから自分が在日朝鮮人であると知っていた。今までそのことが嫌だと思ったことはない。人と違うことを、むしろ誇りに思うような子どもだった。
・小学校4年生の時、些細な口論がもとで同級生から「韓国人のくせに」と言われた。それまでは、韓国人が差別の対象になるとは思っていなかった自分は返す術がなく、気付いたら相手の背中に鉛筆を刺していた。
・中学校では同和教育は頻繁に行われたが、在日に関する道徳・人権教育はなかった。なぜ、在日に関する授業が行われないのかと訴えたが、変化はなかった。
・高校入試の時に、担任との面談で、「お前は朝鮮人だから、周りは下駄を履いていくが、お前は裸足で受けに行くんだぞ」という言葉に怒りを覚えた。「なぜ自分で韓国人といっているのに通名を使っているのだろう。」「本名を使おう。」と親にも先生にも相談せずに決心し、中学の卒業式から本名で生活をはじめる。
・大学に入学し、在日の学生の団体に所属したことをきっかけにして、在日の多様性、立場の違いがあることに気づく。他人との違いを単に誇りに思うのではなく、自分のルーツを知って自分の立ち位置を考えることに誇りを見出すようになった。
・「善意の差別」と呼んでいるが、「生まれたときから日本に住んでいるのだから、日本人と一緒だ」と同一視されてしまう。それはとても淋しいこと。京都の民族学級は、とてもうらやましい。
・日本人と在日朝鮮人ががっぷりと組んで話していかなければならない。学校教育を通して、自分たちの周りにどのような人がいるのかということに関心を持たせて欲しい。
Ⅱ土岐文行さん実践報告内容主旨
外国人教育の取り組みの対象を「外国につながる児童・生徒」と捉え直す必要があるのではないかという問題提起と、その試みとしての「つながる会」の取り組みについて話されました。
・日本では「○○系日本人」考え方が根付かなかった。日本人として認められる許容範囲はとても狭い。その条件に沿わない人は外国人のカテゴリーに分類され、他者化され差別される。
・これまでの学校教育、自分の取り組みを振り返ったときに外国籍か、日本籍かという二項対立でしか子どもを捉えてこなかった。日本籍を有し、外国にルーツをもつ児童に対して支援をしてこなかったという反省がある。
・南米人の母親をもつダブルの子どもの声「学校は、ちゃんとはじめから日本語がわからなくてもお母さんの存在を認めて欲しい。学校の先生はお母さんに情報を伝えてくださ い。」
・京都市における在日韓国朝鮮人生徒数の減少は帰化者数の増加が大きな要因
・在日韓国・朝鮮人の9割が日本人と結婚をしている。1985年国籍法の変更(父系制から父母両系制への採用)により、生まれてくる子どもは多くの場合日本籍を選択している。
・中国帰国者は(残留孤児、残留婦人、呼び寄せの家族)日本籍、中国籍の混合で多く存在している。
・多文化化が進む現実。共同体的な特徴をもつ日本の学校社会でしんどさを感じている子供が存在するのではないか。日本の学校に対する不満をもつ保護者が存在するのではないかと容易に想像できる。
・少数点在の外国につながる生徒をつなげる取組が「つながる会」の取組
・日本人の父と、フィリピン人の母をもつA君。過去の取組の反省から彼を焦点化し学力保障の取組とともに、同じような立場の子に出会わすような取組を行った。
・お母さんにはできるだけ学校のことを直接自分の言葉で語ろうとして家庭訪問を行った。家庭訪問を通じて子どもに高い学歴をつけて欲しいという願いはもっているが、進路についての情報はほとんどもっていないことが分かった。
・A君をつながる会に誘い、3日間の取組に参加した。参加者は38名。南宇治中学校部活動中国拳法の演舞の発表やバーベキューなどの活動を通して、それぞれの思いを交流した。
・A君にとって今回の取組はねらいからはずれるが、大学を身近に感じ、大学進学も進路の選択肢になったことが大きな成果だった。
質疑
Aさん 「つながる会」の取組には何校?何名くらいの生徒が参加したのか?
土岐さん 38名が参加。大半が教育大付属桃山中。南宇治中からも多く参加。学校数で言えば限られた数で、そこが今後の課題。
Ⅲ浜田麻里さん実践報告内容主旨
大学教育の実践者としての立場から、多文化共生社会をめざすために「異文化との本当の出会い」と「相手を理解するための努力」の必要性について話されました。
・文科省専門家会議の答申は国際理解教育の位置づけをし直すという答申だった。日本国内の国際化に目を向けて多文化共生を目指すという側面がクローズアップされた。
・「外国人問題」は「日本人問題」。たとえば日本の大学生になじめない留学生を見たとき、周りの日本人学生に問題が存在している。
・多文化共生社会を作るにはどうすればよいか?
異文化に触れているはずなのに、本当の意味で出会っていない。
・教室の中でいろんな出会いのための仕掛け作りをしていかないといけない。
・英語が苦手な子どもにとって「国際理解」が非常に遠い存在になっている。
・異文化を受け入れると言うことを違和感なく無意識に触れるという風に捉えてはいないか。小さい頃から英語に親しめるような一部の人だけが、国際教育ができるというような狭い意味ではない。隣人の人が持っている異文化を理解することが望まれている。
・自分の思いを相手に伝えるだけでは、必ずしも解決にはならない。
・日本は、同質主義的。日本人は同じだから理解し合えると思っているが、お互いに同化圧力をかけ合って同質化している社会。ルールが明示されているのではなく、暗黙の了解的な部分がある。
・多文化の共生は、自分の枠組みに合わない人でも何とか折り合いをつけてやっていくことが必要。話し合った結果、嫌な思いをするかもしれないが、相手を理解する努力が必要。
・努力が必要であるという前提をお互いに確認する。努力は必要だが、やる価値があることを伝えたい。
質疑
Bさん 小さい頃から異文化に触れることが、様々な人の存在を意識的にとらえられることにつながるのではないかと考える。
浜田さん 自分たちと違う人たちという風に線引きをしてしまわないかと危惧する。実は自分自身もいろいろな面を持っている。自分も人と違うという視点のもとで、みんなが多様なんだという方向に持って行けないかと思っている。
松川(司会) 当事者間の力関係を認識する必要がある。多数派と少数派でお互いの言い分を主張し合うといっても、権力関係の中では片方がもう片方を屈服させる同化にしかならない。
討議
Cさん 外国につながる児童・生徒というネーミングに感動した。自分は中国帰国生徒と分類されていたと思うが、自分では違うと思う。中国に生まれ9歳で来日した。帰国というのは、日本人ということを前提としていると感じる。以前は中国残留孤児と中国残留婦人と分けられていた。外国につながる生徒というネーミングなら自分も自分の子も入ることができる。自分は、中国人であるということを大切にしていきたい。
Dさん 自分は部落出身の小学校教師。歴史の事実から部落問題や在日の問題に関する子どもたちの認識を深めることで、それらの問題に主体的に関わっていくことができるのではないか。
Eさん 外国人問題は日本人問題という言葉に重みを感じた。共に生きることを目指すときに、まず知り合うことが重要。ここにいる人それぞれの立場で自分が何をするかということを今後考えていきたい。
Fさん 様々な外国につながる生徒がいる。自分が担任している不登校気味の生徒。父が日本人で母がフィリピン人。担任は足繁く家庭訪問をしている。土岐先生の話を聞きながら、その生徒が外国とつながる生徒であることに気付いた。やはりこの生徒の場合も、母は日本語が十分に理解できないので除外されている。少数点在の彼らにとってロール・モデルとなる存在に出会う機会は少ない。「つながる会」は外国につながる生徒・児童にとってロール・モデルとなる存在に出会う貴重な機会でもある。
姜さん 歴史教育は楽しい。歴史を単なる知識として捉えるのでなく、自分自身をその中においてみることが必要。自分の立場でどう思うのかを分かち合う場にしていってほしい。
Gさん 知ろうとしているかどうか。文化摩擦、在日の問題。子どもに投げかけられているか。
Hさん 「韓国人のくせに」という言葉をかけた子どもに対して、かけられた子どもに対して、自分はどのように声をかければよいか考えさせられた。 自分自身の出自(親は朝鮮半島出身か)と関わって、つながる会という取組に魅力を感じた。
最後に一言
姜さん 自分が教育に関わっていけることがあるのではないか。自分を使っていってもらいたい。差別の問題はタブー視されている面もあると思うが、、話すところから始めなければならい。
土岐さん 外国につながる生徒、部落の生徒と関わり、彼らをどうエンパワーしていくかを課題に取り組んでいきたい。春のつながる会にもぜひご参加を。
浜田さん 現場でどのような教育が行われているのか、知っていきたい。つながる会でも、姜さんのようにロールモデルとなってつながらない生徒の橋渡しとなってつなげてくれる生徒が出てくれるように取り組んでいきたい。
まとめ
3人のパネラーの話から「出会い」という共通のキーワードが浮かび上がってくる。
姜さんからは在日韓国人児童・生徒が自分自身が民族性との出会う機会、在日同士が出会う機会をもつことの重要性、周囲の日本人も隣人としての在日を理解するための取組が必要であることを実感しました。
また、土岐さんからは外国につながる児童・生徒というとらえ方で、課題を抱える多くの児童・生徒に関わっていくこと、少数点在の彼らが「出会う」場をつくっていくことが、これまでの「同和教育」「外国人教育」の普遍化になるのではないかと感じました。
最後に、浜田さんの提示された「本当の出会い」と「意識的な努力の価値を実感できる取組」を課題として持ち帰り、人権教育の立場から再考し新たな解放教育を創造していきたいと強く思いました。
アンケートから
・部落出身教師という立ち位置から地に足をつけ、マイノリティの立場からしっかり発信していきたいと思いました。
・つながる会の話はとてもわかりやすかったです。これから先の取組で参加した生徒や学生がどう感じ、行動の変化につながっていくのか知りたいと思いました。浜田先生の話からは、周りの人間全体に多文化、異文化を敏感に感じ、受け入れられていることを再認識させるような機会を持つことが大切なのではと思いました。
・姜さんが経験した「鉛筆事件」、自分が担任だったらどのように対処し、取り組んでいくのかということを考えさせらました。原点に戻れた気持ちです。
・浜田先生のお話の「日常、異文化に触れているけれど、本当の意味では出会っていない」というところが心に残りました。本当の出会いができるように考えていくのが教育に携わる者の役割かなと思いました。
・最近友人が在日であることを本人から聞きました。日本人的な彼に対して、在日であることとうまく結び付けられずにいます。しかし、彼が今後この問題に対してつまずくことがあれば少しでも力になりたいと思っています。